パラレル
飲食店店長のツナ。大人リボーン
















からんころんと音が鳴ってドアが開いた。いらっしゃいませー、と元気な声が小さな店内にはよく通る。
ドアを開けたリボーンはここの常連だ。いつも一人でやって来る。丁度お昼に来る客が帰って、店内が落ち着いた頃に。

喫茶店と軽い定食屋がミックスされたようなこのお店、『ナッツ』という。
席はテーブルが4つ、カウンターが6席というひっそりと、だがわりと常連がついているこの店は店長である綱吉、母の奈々、後アルバイトが一人か二人いるぐらいの店だ。
基本昼間は母と二人でやっているらしい。

店員に通されるでもなく、一番壁際のカウンター席にリボーンは座る。そこが彼の定位置なのだ。

「いらっしゃいませ。今日もいつもので?」

母親ゆずりの笑顔で綱吉はリボーンに注文を取る。すでに注文用紙の下の方には、リボーンがいつも最後に注文するエスプレッソが書かれていた。

「あぁ。…あ、いや、今日は生姜焼きがいい」
「はい、かしこまりました」
生姜焼き一つ。
カウンター内で用意を始めた母に言う。
奈々は冷蔵庫から一つアルミの入れ物を取り出し、フライパンを火にかける。
入れ物の中から肉を取り、熱したフライパンの中に入れた。アルミの中でタレ漬けになっている肉は、熱いフライパンの中からなんとも食欲をそそる匂いをさせる。
その間に綱吉はカウンター内に入り、白米を装い、温めなおしたみそ汁を入れ、冷蔵庫に肉の入った容器を仕舞って漬物の容器と千切りにされたキャベツの大きな容器を取り出す。小皿に漬物を入れ、大皿にキャベツを盛り付ける。それらをお盆に乗せる頃、肉も焼けたようだった。
肉をキャベツの入った大皿に乗せ、上から肉と一緒にフライパンにあったタレをかければ完成だ。

「お待たせいたしました」

どうぞと言ってリボーンに差し出すと、満足そうに口を緩めた。

「いただきます」

箸を持って手を合わせて日本特有の挨拶。イタリア人であるリボーンは綱吉親子からこの作法と意味を教えてもらってから、ここで食事をする際この挨拶は欠かさない。

「リボーン君は綺麗に食べてくれるから嬉しいわぁ」
「ママンの料理はうめぇからな」
「うふふ、ありがとう」

カウンター越しに奈々も綱吉もリボーンの食べっぷりを見ている。美味いと言われた奈々は心底嬉しそうだ。事実、奈々の料理は美味い。家庭的な暖かい味がするのだ。


ごちそうさまでした、と同じようにして箸を置く。そうすれば見計らった綱吉はお盆を下げて、エスプレッソをそこに置いた。

「リボーンは後どのくらいこっちにいるの?」

何の仕事をしているのかは知らないが長期の仕事があるらしく、時折リボーンは海外に行く。日本に戻ってくると手土産を持って来てくれるのがここ半年だった。

「そうだな…今のところはいる予定だぞ。上から何も言われてないしな」
「そっか。お土産ないのか」
「…テメェ客に対して失礼だぞ」

エスプレッソを飲みつつ呆れた顔で言えば軽く謝ってあしらわれる。
ここの店の人間は、あまり特定の人物と親しくしないリボーンにとっては珍しいことだった。もちろん友人と呼べる人はいたが、それ以外ではほとんど人付き合いなどしない人間だったのだ。

「そろそろ行く。勘定はここに置いとくぞ」
「いつもありがとう、リボーン君」
「また来るぞ。店長殿のあほ面見にな」
「おまっ!オレ年上だぞ」

席から立ち、見えないからなと笑ってやれば、どうせ童顔ですよと返って来る。こうして軽口を叩き合えるのは常連の特権でもあった。

「じゃあな」

またからんころんと音を鳴らしてリボーンは出て行く。ありがとうございましたー!と店内の声を後にして。


















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設定的には
綱吉が25、リボーン21くらい。
曖昧ですけど。
生姜焼き と 客に対して失礼だぞ
ってリボーンに言わせたかったんです。

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