狂気 *
2012/07/13




どうした。何が起きた。

「いらないモノは切り捨てる。何であれ、どれであれ」

何故あいつは仲間の上に座っている。

「それがどんなに大切だったとしても、過去なのならばそれは同様」

一見してすがすがしくも見える。しかし寂しそうにも。どうにも心が見えない。読めない。

「先生」
「……なん、だ」
「裏切り者には裁きを、って俺は学んだんだ」

こちらを向いたあいつの顔は薄ら寒い笑みを張り付けている。初めて見る表情。ぞくりと背筋に悪寒が走った。
こんな顔、俺は見た事がない。

「そして裏切った奴は信用できないことも」
「これは、なんだ」
「裏切り者の残骸だよ。生命力強そうだし生きてるんじゃないかな」

ゆっくりと立ち上がった。俺は理解しがたい事実に脚が動かない。呆然と立ち尽くすのみだ。

「ふふっ」
「…何がおかしい」
「一度目の事思い出したんだ。中学生だったオレには衝撃的すぎて、でもまだ未練があったんだぁ」

おかしそうに笑う。無邪気に。
中学生といえば最初にイジメられた時だ。周りは皆裏切り、孤立した。だが後に誤解とわかり和解したはずだ。

「でもねー、和解したって不信感は募っていく一方だった。また、二回目。ないなんて限らない」
「獄寺達は何をしたんだ」
「んー?操られたのかどうかは知らないけどさ、敵対ファミリーに情報リークしてたんだよー」

皆が、笑っちゃうよね。なんて笑いながら言うが目が笑っていない。それどころか感情がない。
見ればわかる。散らばり、横たわる人間。どうやら獄寺の部隊と山本の部隊は全滅だ。全守護者と各々の部隊を奴は一人で片付けたというのか。

「リークして乗っ取ろうなんて、脳内花畑だよねぇ」

くすくすと。無機物をみるようにしながら、彼はポケットに手を突っ込んだ。そしてゆっくりとこちらへと歩いてくる。
俺は自分の最高傑作だというのに、見たことがないモノと対峙しているような気分だった。不気味な笑みがよりそういった気分にさせるのだろう。

「リボーンは裏切らないでね」

真正面まできてにっこりと彼はそう言った。目にいつもの輝きがない。鈍く、澱んでいる。

「ああ。今のところ裏切るなんて予定はねぇぞ」

それだけ出すのが精一杯だった。他に何も言えなかった。
俺の答えに満足したのか、またその笑みのままゆっくり歩みを進める。高らかに、至極楽しそうな笑い声を響かせて。

「…ツナが狂ってしまった」

元々一度目で狂いかけていたのだろう。元来優しい奴だった。だから蓋をして押し殺していたのだと思う二度目の今回で何かがはち切れ、歯車は完全に狂ってしまった。
ようやく動けるようになり、まだ響く笑い声の方を見ながら、自分はどうすれば良いのかわからなくなっていた。



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高らかに笑う
狂った綱吉が書きたかった。
反省などしていない。






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