小さなお店
2012/04/18




「で?何しろと?」

連れて来られたのは大きな部屋。会議室とでも言うのか。ようやく綱吉は降ろされ、促されるまま適当な席に座る。苛立ちは隠さない。むしろ隠す必要がない、と言った方がいいかもしれない。

「ちょっと待ってろ」

スクアーロは飲み物を綱吉に渡し、ノートパソコンを立ち上げていた。少し離れたところで踏ん反り返るように座ったザンザスが眺めている。

「連れてきたぜぇ」

イヤホンマイクを手にしてパソコンに話しかける様はなんとなく似合わない。そう思っていれば、そのまま綱吉にそれらが渡された。装着しながら画面を見れば、写っているのはいくつもの子会社をまとめ上げるボンゴレのトップだ。

『久しぶりだね、綱吉君』
「…お久しぶりですね」

クソジジイと続けたいところをぐっと我慢する。そんな内心が表れているのか顔は引き攣っていた。

「なんの用で?」
『跡を継ぐ為うちの』
「断る!」

すべて言い終わる前に綱吉は彼の言葉を遮った。ザンザスとも言い続けていた。いやだいやだ、と。誰であろうと変わらない。

『必要なんじゃよ?特に君の腕と思考。舌もだ。食品業界ではかなり重宝されるだろう』
「じいちゃ、いや。九代目、それはオレの知ったこっちゃないんで」
『ふむ…』

考える素振りを見せる彼。またも綱吉の苛々は募る。
家族や同級生以外に知る者は少ないが、元々綱吉は色々と特化している部分がある。勉強はといえばあまりよろしくはないが、経営、人の使い方や動かし方はピカイチである。舌もそうである。例えば何が多い何が少ない、足りないなどがすぐわかる点だ。改善点と改善策が瞬時に出せるところだろう。だからこそカフェレストランなるものをやりだしたのだ。後は運動神経自体はそこまで良いわけじゃないのだが、自分の身を護るとなったり、知人を護るとなれば普段からは考えにくい動きをする。つまりは戦闘関連には強いのだ。

『ならばやりたくはないが、せざるを選ないかね』
「…こんのタヌキ」
『いいんじゃよ?君の店がとりあえず営業できなくなるだけだし』

意地悪に笑うタヌキ。綱吉からすればそんな感じである。
そして根回しさえすればそれもできるだろう人物。権力の乱用だ。大企業が単なる小さい飲食店を潰すなど朝飯前だろう。

「…話だけ」
『うん?』
「とりあえず話だけは聞きましょう」
『流石綱吉君。こちらに飛んでもらう事になるが構わんかね?』

疑問形であるのに有無を言わさない。YESとしか答させない。後ろから眺めているザンザスはやはり親類なのだと思う。事実綱吉にもそういった所がある。それにすら反発するのが彼なのだが。

「ハッキリ言えばどうです?飛んで来いと。聞くと言った以上、拒否権なんてないんでしょうに」

ため息一つそう言えば画面の向こうのタヌキは笑う。流されないようにしておかないと、完全にホイホイ流されてしまうのだ。
面倒臭い手間かけさせやがって。綱吉の首元まで上ってきている言葉を飲み込む。悪態は頭の中でつきっぱなしだ。

『わかっていてくれて嬉しいよ。ワシもあまりここを離れられない立場でね』
「飛びますよ、行けばいいんだろ」

ザンザスよろしく背もたれによりかかり、偉そうな態度で投げやり気味に言えば九代目と呼ばれる初老の男性はにこやかに笑った。とても人の良さそうな笑みである。

『待っているよ』







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長いこと放置してた。
綱吉の性格が
どんどん私に似ていく(原作無視)



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