小さなお店
2012/02/23




「これは…」

そう呟く彼女達の前に置かれたのはスイーツだった。見た目にかわいらしい薄いピンクや鮮やかな赤が色付いているもの、更にフルーツが乗っている物もある。

「春の期間限定スイーツ。苺と桃を使ってみたんだ。食べてみて?」

珍しく定休日のナッツ。綱吉は一人朝からナッツに足を運び、それらを作っていた。
作ったものは三つ。店を閉めた後や開ける前にちょこちょこと試行錯誤を重ね、やっと自分の納得のいく味ができたらしい。らしい、というのはまだ少し首を傾げる部分もあるからだ。
そこでこういった甘味が好きなハルや仕事が休みという京子、獄寺の姉のビアンキに来てもらい意見を聞こうというのだった。一般に女性が好きだろうと思っているので、それならば食べる女性に聞くのが一番だということだ。

「春らしいわ」
「色も素敵でとってもキュートです!」
「見てるだけで楽しくなるね」

一人一つを手に取り思い思いの感想を口にする。そんな様子をカウンターから笑顔ながらに真剣に綱吉は見つめていた。

「とりあえず食べてみてよ。説明は食べながらするから」

促されるままにスプーンやフォークを手に取り彼女達は口に運ぶ。フルーツを使っていると言うだけあり、口いっぱいにその風味が広がる。

「ビアンキの持ってるのは桃を使ったシャーベット。ジェラートと迷ったんだけどね。結構細かめで、しゃりしゃりってしてる中に桃のピューレも凍らして入れてるんだ」
「さっぱりして甘すぎなくて美味しいわ。桃じゃなくてあえてバニラアイスを乗せてもいいかもしれない」
「アイスかあ」

さくさくとした氷は部屋の証明を浴びてキラキラとしている。薄く白っぽく色付いた中に薄いオレンジのようなピューレの氷がまたかわいらしく見えた。

「ちょっと待って」

ビアンキにそう声をかけるとファミリーパックの大容量のアイスクリームを取出した。もちろんバニラである。
スプーンを手に取り、それを救ってビアンキから受け取ると桃のシャーベットの上に乗せた。薄い色にクリーム色したアイスがより際立つ。

「これでどう?」

一口運び、飲み込んでからにっこりと彼女は笑った。それを見て綱吉も笑顔になる。一番何か足りないなあ、と試行錯誤が多かったのがこのシャーベットだった為、余計にだ。

「京子ちゃんのは苺のパフェ。苺のパフェはソースはベリー系を混ぜてるんだ。アイスはバニラで、中に大きめに切って果肉がよくわかるジャムが入ってんの」

赤い苺が三つ生クリームの上に乗り、周りに小さく切られた苺が無造作にちりばめられソースがかかっている。その下に薄いスポンジが敷かれアイスがあり、ジャムがコーンフレークに挟まれ層になっていた。

「美味しい!ジャムの酸味がアイスとか生クリームと混ざって凄く美味しい」
「良かった、今回の一番の自信作なんだよ」

美味しい美味しいと手を進める京子に綱吉はまた目を細めた。手間が一番かかった分、喜んで貰えるのは嬉しかった。手間とはソース作りにだ。

「ハルのは苺と桃のロールケーキ。クリーム多めで中にごろっと食べれるような感じで入ってるんだ。厚めに切ってるから食べ応えはあるんじゃないかな」
「あります!デリシャスですよツナさん!スポンジの生地がふわっふわです」

ハルの食べるロールケーキは回りがスポンジで中は丸々クリームになっているロールケーキだ。クリームをひいて苺と桃を置いて更にクリームを乗せて巻くという割とシンプルであるが、シンプルなりに綱吉のこだわりが出るものである。それがハルも言ったスポンジだ。

「スポンジはこだわったからねー。ま、喜んでもらえたならオレも嬉しいよ」

カウンターに頬杖をついてではあるが、本当に嬉しそうに綱吉は三人に言った。自分が作ったものを喜んでもらえるのはやり甲斐があったというものだ。

「レシピを教えて欲しいくらいよ」

まだまだ感想をハルや京子が述べる中、ビアンキが綱吉を見据えた。よほど気に入ったらしい。それはそれで嬉しいし、隠すつもりは別にないのだが。

「教えてもいいけど…」
「けど?」
「ビアンキも獄寺君も料理得意じゃないからなあ」
「あら、心外ね。隼人はともかく私は作れるわよ」
「えー…あ、いや、なんでもないので睨まないで」

綱吉の脳裏に過ぎるのは見たこともないような色をした食べ物。どこから突っ込んで良いのかもわからず、呆けている間に半ば強制で食べさせられたのだ。それから三日は腹を下したという、トラウマの手料理だった。

「出来たら食べさせてあげるわよ?」
「いいよいいよ。それより獄寺君にあげようよ。たまには姉ちゃんからのプレゼント」
「それはいいわね!隼人は照れ屋だけど、きっと受け取ってくれるもの」
「そうそう」

獄寺君ごめん、と内心思う。店の従業員を盾にするほど綱吉は回避したい。

「教えて頂戴よ?」
「後でメールするから」

食べ終わった器にスプーンが入れられ、話声のある中、からんと音が響いた。





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ビアンキ 27歳
獄寺の腹違いの姉。原作と違い歳は離れています(なんでもありがこのお話です)
モデル。京子ちゃんが益〇つばさや小〇純のようなモデルならビアンキは富〇愛のようなモデル。日本だけでなく世界で活躍中。だからちらほら海外滞在する。
リボーンと面識はあるものの、恋人や愛人関係であるのかはわからない。海外から日本に帰ってくると、弟の顔を見るついでにナッツに必ず顔を出す。
京子やハルからは憧れの目線で、奈々には娘のように可愛がられている。綱吉や山本達からはちょっと恐れられている。料理はポイズンクッキングではないがやはり壊滅的(銀魂のお妙さん的な)で、絶大なトラウマを弟、獄寺に与えてます。ある意味ポイズンクッキングかもしれない。
気が強く、やっぱり愛に生きてます。それでも仕事は疎かにはしない。皆のお姉さん。

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