高校生
2011/07/16




「ほんとに良かったの?」

職員室を出ればツナがいた。どうやら待っててくれたらしい。

「なにがー?」

とぼけた顔して聞いてみれば、より一層暗い顔してオレは見られた。知ってんよな。オレ言ったもんな。

「大学の推薦」
「オレ馬鹿だからあんなとこ行けねーよ」
「嘘。山本いっぱい来てんじゃんか」

優勝こそできなかった甲子園。それでも活躍を見た大学側からオレには推薦というか、そういったものが割と来た。もちろんそれはツナにも言ったから知っていて、あいつはすごい喜んでくれた。オレもすごい嬉しかったし、オレの野球を見てくれた人はこんなにもいるんだと思えた。

「山本やっぱ」
「ストーップ」

俯いて言う言葉はわかってるよ。大学行って野球続けた方がいいんじゃないの。そういうことだろ。野球は続けたくないわけじゃない。好きなもん続けたくないわけはねーだろ。

「それ以上言うなよ?」

ぽんと頭に手を置けばうっすら涙目になりながらツナは顔を上げた。心配ないと笑えばどうしてだと声を奮わせた。

「山本、諦められんの…?」
「昔行ったろ。ダチより野球が好きだったのはお前らと友達になる前だって」
「でも!」

頭に置いた手を離してちゃんと目をツナと合わせた。

「でももクソもねーの。オレの意志なの。オレの意志にツナが何か言っちゃうの?」
「それは……」

言葉は反則。わかってんだ。だけどそれ言わないとツナはまだ言うだろ。だから言った。ツナは優しいから来るなって言ったよ。でもな違うじゃん。オレはまだなんにもお前に言ってなかったろ。
それに大学に行けばオレは日本に残りお前らはイタリアへ行くだろ。それはそれで良いかもしんない。でもツナがいない。一番にオレの活躍を見てくれて、オレを応援してくれて、一緒に笑ってくれる奴が、親友がいないじゃん。離れても親友は親友かもしれないけどさ。

「オレの行くとこはツナの隣なんだよ」

だからオレを隣に置いてよ。オレの居場所をお前の手で消さないでよ。オレが一番願う場所を。

「………わかった」

まだ何か言い足そうな顔はしていたけど、ツナが笑ってくれて。それだけでオレはもう満足。

「ん。帰ろうぜ」
「そだね」

ぽんとツナの背中を押してオレ達は下駄箱に向かって黙って進んだ。なんて言っていいのかわからないけど、ツナのせいではないことだけは事実だから。

「……ツナァ、気に病むなよ」
「だいじょぶ。それより山本、ありがとう」
「今更だし水くせーよ。もう決まってたのな」
「はは、そっか」
「そーだよ」

オレを隣に置いてくれてありがとう。








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山ツナ。
うーんリハビリになるかな。



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