CMパロ
臨也が携帯です
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「あ、メールが来たよ」

そう知らせるのはこの間新しく買った俺の携帯。臨也って呼んでよ、と初対面で偉そうに言われたのをよく覚えている。それでも、生まれてから一度も携帯を持った事の無い俺がいきなりこんな性能の良いこの携帯を使いこなせるだろうか、と小さな不安を抱いたりもしたけど、今はそれなりに日常で使う機能は使いこなせるようになってきた。まあでも俺が知らない、まだ未知のアプリもあるんだろうけど。
俺は真っ黒でシンプルなスタイルの携帯に一目惚れをした。この理由はまだ言ってない。携帯が調子に乗るから。

「…………」
「…………誰から?」

メールが来たことを知らせてから臨也が喋らなくなったので、しんとした空気に耐えられず俺は口を開いた。まあ臨也が言うのを渋る時点で誰からのメールかは分かってくるけれど。

「…………平和島さんか」
「…………違う」
「平和島さん何だって?」
「………………会いたい、って」

物凄く嫌そうだ。苦虫を噛み潰したような、そんな表情が隠しきれていない。むしろ全力で会うな、と伝わってくる。

「はあ……仕方ないな」
「………行くの?」
「行くよ」

行くよ、と即答したのが不味かったのか、それ以前に行くと言った事が問題だったのか。座椅子に寄っ掛かっていたはずの俺の視界はいつの間にかテレビではなく、あまり見慣れない部屋の天井が広がっていた。

「…、……あ?」
「行かせない」
「おま、ちょっ…離せって」
「行かせないよ」

ここで自分が言った言葉が少し不十分だった事に気が付いた俺は、既に自分のTシャツの中に手を入れてきている臨也に対して慌てて口を開いた。

「臨也、ちがっ、違う!」
「何が」

ああ、怒ってる。笑顔が無い。臨也は俺の服の中で動く手を止めないまま聞き返してきた。

「っ別に、へ、平和島さんに会いに行く為にっ、出掛ける訳じゃ、なくて!」
「……じゃなくて?」
「ただ、臨也と出掛けたかっ、いてっ」

ごつ、と額から痛い音がした。額を合わせるなんて可愛いものじゃない……人はこれを頭突きと呼ぶ。そのまま臨也がシズちゃんはどうするの、と聞いてきたので、後で断りの電話でもメールでもしようかと思ってた、と少し緊張気味に言うと、臨也は漸く服の中から手を退け、同時に顔も離れていった。未だに心臓はばくばく言っている。さらに突然ピーンポーン、とインターホンが鳴ったので俺の肩がびくっと跳ね上がった。相手が誰かは分からないがとにかく今は上手く喋れそうに無いので、仕方なく臨也に頼んだ。

しかしはーい!と機嫌良く玄関の扉を開けた臨也が物凄いスピードで戻ってきて決して大きくはない俺の背中に隠れるまであと数秒。



(げっ)
(臨也ああああ!てめえあいつに変な事してねえだろうな!)
(帰れ!)


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あんまり臨也が携帯の意味が無い件。気にしない。書きたかった。
シズちゃんの最後の思考回路はですね、
ほぼ夏木くんが扉を開けてくれる→何故か今日は臨也が出てきた→なにがあった
な、状態です多分。
本当は臨也に充電と称して夏木くんにあんなことやそんなことをさせたかっry