08



さっき大多数の人に赤目モード赤也くんを見られてしまったわけだけど、ばれてなきゃいいな。今更だけど…。

帰りがけに寄ったゲームセンター。
ここは結構広くて多彩なゲームがたくさんあるし赤也くんのお気に召すゲームもあるはずだろう。
私はホッケーや太鼓の音楽ゲームしかやったことがないので嬉々として格ゲーを始めようとする赤也くんを興味津々に眺めていた。

「この格ゲーこっちにもあるんすね!」

ラッキー!と慣れた手つきでレバーを動かす。赤也くんの操作しているキャラクターは格闘家みたいな格好をしていて、相手に攻撃をさせる暇もなくコンボを決めてついには圧勝してしまっていた。

「相手も人がやってるの?」
「そうっすよ。ちなみに連勝すればボスを倒すまでずっと戦えるんで、俺の天才的妙技見ててくださいねってこれ丸井先輩の台詞だ」

言い換えれば負けるとお金がかかるけど勝っていれば問題ないってことらしい。
凄いなあ、相手キャラボコボコだよ。
ボタンもがちゃがちゃ押しているだけかと思ったが、ちゃんと順番があるらしくその通りに入力すると必殺技が出せるんだって。
難しい。私には覚えられない。

軽くボスを一捻りしてしまった赤也くんは満足げだった。

「楽勝ー。もっと骨のあるやついねーのかよ」
「赤也くん強いねー」
「やりこみましたから!あ、次あっち行っていいすか?」
「うん」

格ゲーコーナーを出るとき、おそらく赤也くんにボコボコにされた人たちはみんな青い顔をしていた。
恐るべし中学生。

次にやって来たのは音楽ゲームが置いてあるところだった。
ギターやドラムのゲームがあるなか赤也くんは鍵盤のゲームをやろうとしていた。
太鼓なら私もわかったんだけどな、おしい。

これもまたすごかった。
曲に合わせて落ちてくる音(皿と言うらしい)を弾いてるのだが、スピードも量も凄まじい。
なんでそんなに指が動くの?というくらい動いていたし、動体視力がいいのかあまりミスをしないで弾いてるし。私にはぼやけてしか見えないよ。

「なーんか動きづらいと思ったらパワーリストつけたままだったんだ」
「それって命令されてつけてるっていうパワーリスト?」

赤也くんは頷きパワーリストを差し出す。
パワーリストにはA.Kという文字が入っていた。

「持ってみます?」
「重っ」

重い。重すぎる。
ずっとつけてたら腕とれちゃうよこれ!
こんなのを両手両足につけてるって…どれだけ筋肉つくんだろう。外したあとの解放感はすごそうだけど。
…赤也くんと腕相撲だけはやらないようにしよう。机にヒビが入るどころか地割れするんじゃないかな…!

台に置いたとき、とても重量感のある音がしてゲーム機が壊れないかひやひやした。



「あ、そうだ」

一通り遊んでゲームセンター内をふらついていれば嫌でも目にはいる派手なコーナーがあった。

「せっかくだから撮っていこうよ」
「えっアレすか…?」

その名もプリクラ。女の子しかいないためか赤也くんは乗り気じゃなかった。というかあまりの混雑さに引いてた。
大抵女性のみのプリクラが多いが、ここの看板には女性がいれば男性も可と書いてあるので問題はない。

「赤也くんと仲良くなれた記念に」
「えー写真でいいじゃないすか」
「何事も経験だよ」
「これが将来何に活かされるんすかー!」

まあ久々に見たものだから懐かしくて撮りたくなっちゃったのもあるんだけど。

期待を込めた眼差しで赤也くんを見つめること数秒。

「…わかりました!さっさと撮ってさっさと帰りましょ!」
「さすが赤也くん」

そうと決まれば女の子達の波をくぐり抜けて空いてるプリクラ機に入る。眩しいライトのせいで目がチカチカした。

「うおー目が痛い」
「ほんとに撮ったことないんだね」
「だって男達だけだと入れないじゃないですか。それに興味なかったし」

珍しいものでも見るように画面を見つめていて、上のカメラに気が付くとその前で手を振ったりして遊んでいた。
コインを入れて設定も適当に選んでいざ撮るとなると何だかわからないけど緊張した。
いつも思うけど撮るときのカウント早いよね。
赤也くんがあたふたしてるうちに一枚目が撮り終えてしまった。

「もう撮ったんすか?!早くね?」
「ほら二枚目!」
「うお!」
「見切れてるよ赤也くん」

そう言うと逆に真ん中に来すぎて今度は私が見切れたりで笑いが絶えなかった。
後半は赤也くんを前でしゃがませて私が後ろから頭に角が生えてるかのごとく人指し指を立てたり、変な顔をしてみたり。
私の究極の変な顔を見て赤也くんが吹き出した瞬間を撮られたおかげで二人とも酷い顔に仕上がっている。

最後の撮影で「1+1は?」というアナウンスがあったので必然的にピースをし「2!」と答えたのだった。



もちろん赤也くんは落書きも初だ。にも関わらず遠慮の欠片も感じさせない落書きをしてくれた。
可愛らしくデフォルメされてるが汚いスタンプ押しすぎだからね。私の頭とか肩とか手に乗っけすぎだからね。
そういえば自転車の鍵につけてたキーホルダーもこんなんだったな…。うん、中学生だ…。

「赤也くん半目だ」
「うわすげー間抜け面!」

とりあえずきらきらしてるスタンプを満遍なく貼ってあげた。嫌がられたけどさっきのお返しだ!

どの写りよりも一番平凡のピースで撮った写真は、お守りとして手帳にでも挟んでおこうかと思うくらいに赤也くんはかっこよくてにやにやしてしまった。
目の保養だ。

プリントできたプリクラを半分に切って片方を赤也くんにあげてからまた女の子達の間を縫ってゲームセンターを出た。
帰り道、いつまでもプリクラを見る赤也くんは結果的に楽しんでもらえたようだった。

「男だけでも入れるところあったら先輩たちと撮ろうっと」
「幸村くんは女の子に見えるんじゃない?」
「…確かに…!部長、元気になったら誘ってみよ」

そういえば幸村くんは難病を患って入院しているんだっけ…。
赤也くんがこっちに来る前の時間軸はわからないけれど、幸村くんの手術は成功するはずだから早くよくなることを願うばかりだ。

「あ、なまえさんが来れば楽に入れるじゃないすか!」
「…私が行ってもいいのかな?」
「もちろん!」

部員の人たちと撮るとなると、赤也くんが元の世界に戻れた後だ。

「その機会があったら、みんな連れていってあげるね」

叶うかわからないけれど。
私のいる世界と赤也くんの世界が別々だと思い出したのだろう、赤也くんは眉尻を下げてうつむいてしまった。

あの強面の真田くんとか優等生柳くんがプリクラとか想像できないけど、立海のみんなで撮ったプリクラは見てみたかったな。


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