バレンタインが去った翌日。空は気持ちいいほどの青空で、太陽の光を浴びた雪はきらきらと輝いていた。

綺麗だなあと感動するあまり写メってしまった。いやー自宅から見える風景じゃないみたい。幻想的だ!
低血圧なぜんざい君を叩き起こしてハイテンションで写メを見せたらうざがられた。はいはいうるせえってか。

それから朝ごはん食べたけど特に連絡もなかったから部活も精市も通常運転だろうと思い、支度をしてぜんざいと学校へ向かった。さっ寒い…!けど、やっぱ雪道歩くのって楽しいね!ぜんざいに雪玉投げてやりたかったけど今日はいつもの荷物プラス昨日作ったチョコレートケーキで手が塞がっているので泣く泣く断念した。



「おはようございまーす。あれ、丸井先輩沈んでません?」
「わかるか?なんで今日じゃなくてバレンタイン当日が休校になんだろうな…俺のチョコレート…」
「バレンタインデーの翌日、つまり今日もテニス部ファンがチョコレートを渡しに来る確率は94%といったところだが」
「当日に貰うよりぜってー少ねえよ…」
「まあまあ、太る原因が減ってよかったじゃないすか!」
「それでも死活問題なんだよ!俺のチョコレートカムバーック!」
「丸井先輩の甘い物への執着ってすごいんですねちょっと引きました。私が作ったのでよければ食べてください」
「まじ!?食べる!いただきます!」
「早っ」
「俺の早食い並のスピードやな」

ケーキをぺろりと平らげてしまった丸井先輩は憂鬱な表情から腹を満たして幸せそうな顔になっていた。食べ物の力ってすげー。

「ああ、言い忘れてたけど今日は除雪作業だよ」
「えー!ワイテニスしたいー!」
「金ちゃん、除雪しないとテニスできへんから協力せなあかんで」
「むー」
「だから丸井、わかってるよね。

食った分働け」

「イエスボス…!」

上手くパシられた丸井先輩を哀れんだのはきっと私だけではないだろう。丸井先輩の口のまわりについてるカスが精市の恐ろしさを和らげていた。

ケーキ、後で渡そう。そう決意した私はこっそりロッカーの中に紙袋を突っ込んだ。汗臭い匂いが混ざらないことを祈ろう。

そして始まった除雪作業。真面目に働いてるのは真田先輩と柳先輩、柳生先輩と石田さん、小石川さんくらい。私も微力ながらちまちま働いてるからね、遊んでないからね、間違えないようにね。他のメンバーは作業してると見せかけて遊んでいたり、真田先輩の雷を受ける覚悟が出来ているのか全力で雪合戦に打ち込んでいたり。うーん…サボってる奴もいるな、現に千歳さんが見つからない。白石さんも金ちゃんさんたちと一緒に雪だるま作って大きさを競い合っている。はしゃいじゃう気持ちは凄く共感できるけど…意外だ!てか金ちゃんさんタンクトップにジャージ羽織ってるだけで寒くないのだろうか。見ているこっちが寒イボ!



そんなこんなで終了したころにはお昼になっていた。腹が減ったときこそチャンスだよね!一足先に部室へと戻った私はロッカーから紙袋を取り出して手当たり次第渡していくことにした。

精市と真田先輩と柳先輩はすぐ見つけたので渡したんだけど真田先輩の反応面白かったなあ、キエエエエエエとか発狂されたの初めてだよ。精市にケツバットされてたけど耳キーンてした。ていうかバットどこから出したの…。

金色さんには今流行りのラブ注入をされたので、ラブ注入返しをしたら一氏さんに「アカン小春う!」とか言って邪魔をされてしまった。…ん?金色さんの場合友チョコになるのか…!?悩みますな!

仁王先輩と柳生先輩、ジャッコー先輩に渡すときに熱い視線を感じて振り向けば丸井先輩がアイ○ルのCMにでてきたチワワのような瞳で何かを訴えかけてきた。もちろんメッセージは受信できなかったので用が済んだら何事もなかったかのようにその場を立ち去りました。一応言っておくけどおかわりはないからね!

そんで散歩から帰ってきた千歳さんと四天宝寺メンバー全員に渡し、残るはあと一名。



「切原ー、たくさん貰ってるだろうけどバレンタインおめでとう!」
「わっなまえ!?さ、さんきゅー…つかおめでとう?」
「男子はバレンタインが第2の誕生日のような感じじゃない?」
「あー言われてみれば。でも甘いもの限定ってのが気に入らねえ」
「まじか!ケーキ作っちまったよ!あっケーキはケーキでも焼肉味のケーキにすればよかったのか!」
「その発想はなかった」
「不味そうだね」
「お前が言うなよ。…てかケーキってさっき丸井先輩にあげてたやつ?」
「そうだけど」
「…まーそーだよなぁ…」
「やっぱケーキ嫌だった?」
「違うっそういうんじゃねえから!むしろ嬉しい、うん…嬉しい…ぜ!」

よくわかんないけど本人が喜んでるならいっか!

「ふふふ、ルーキー氏。バレンタインはまだまだ終わらんよ」
「へ?」
「ゲーム内でもチョコ集めたから送っちゃうよー超送るよー」
「イベントか。俺でいいなら何個でも受け取るぜ」
「さすが!なんかさ、女キャラが男キャラにチョコ贈る仕様にしたほうが燃える気がする」
「確かにむさいキャラから貰ったら身の危険感じるよな」
「気を付けろよー。ケツの穴を攻略されないことを祈っている」
「…それ女が言うことじゃねえからな?」
「へーい」
「でもま、これが幸せなんだろうなー」
「幸せ…だと?昨日休みだったからって平和ボケしてないか?ついでに聞くけどどこが幸せなのさ」
「…今!」


幸せな時間
(だから最近ゲーム内で構ってくれないのだね…)
(え!俺いつも通りだけど)
(強化練習が幸せだなんて本当にテニス好きなんだな…!)
(いや…そうじゃなくて…)

 

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -