えええっと…。

テーブルで向かい合って座る私とぜんざい。ぜんざいの視線がちくちくとか可愛らしいもんではなくぐさぐさと突き刺さる。

テーブルに並べられたハンバーグとサラダと白いご飯とお味噌汁。自分で作っておきながら洋食と和食混ざってるやんとノリツッコミ。
何か気まずくてぜんざいに顔が向けられないままハンバーグを恋人のごとく見つめ続けた。

ハンバーグが愛の言葉を囁いてくれるはずもなく、冷めそうだったのでお箸を手に控えめに「い、いただきまーす」と食にありついた。
そしたらぜんざいもいただきますと一言言って食べ始めた。ほっ…。

無言のままご飯を平らげて食器を片付ければピロピロと携帯が鳴る。私のだ。

「失礼します…」

とりあえず断りをいれてメールを確認すれば精市からだった。

変わりはないか、熱は出てないか、財前はちゃんと帰れたか、と珍しく優しい質問攻め。
こう言うと普段は優しくないのかっていう話だな。うん、まあそれはそれだ…。

オールオッケーとだけ返信して何の気なしに正面を向けばぜんざいと視線がかち合う。やべえ。

「で?」

こ、こえー。表情ひとつ崩さねえよ。
で?と聞かれて何がだよと反論したいがこれはきっと…。

「今日何があった?」

ですよね。

「…やっぱ言わなきゃだめ?」
「当前やろ」
「じゃあ言うね…しょーもないことだけど、は、恥ずかしいなおい…。最初に言っておくけどさ、聞いても練習に集中してね?」
「内容によるわ」
「いーやこれだけは譲れない。練習に専念してね?」
「だから内容に」
「専!念!してね?」
「…はよ続けろ」

よし。もしものときのために釘は指した。
イライラしてるぜんざいに怖じ気づきつつも、私は今日のトイレ事件をぜんざいに説明した。
水をぶっかけられ、水浸しのまま廊下を走り、保健室に駆け込んで早退エンド。
さあ、ぜんざいさんは笑うか馬鹿にするかどっちだ。

「………」

無言か〜い。
私としてはね?お前ばっかでー!そんなんで早退したのかカス!って笑ってくれた方が救われた気がするんだけどなあ。精神的に。

「保健室」
「は、はい」
「切原いたんやろ」
「いました」
「何された」

な、何されたと言われましても…。
ぜんざいさんの目ははよ言え、とおっしゃっていました。

「タオルくれて…元気をくれた」
「はあ?」
「いやだからね、元気付けてくれた。それだけ!」

そうだ、あれは切原なりに元気付けてくれたんだ。私なんかを心配してくれて嬉しかったよほんとに。いや、うん…思ったことは、人肌って落ち着くんだなってことだよ…。
うおおお恥ずかしいいい。

「…ムカツク」
「はい?」
「携帯いつでも肌身離さず持っとけ!またなんかあったら第一に俺に連絡しろ、ええな?」
「は、はあ…」
「ああ?」
「わかりました」

ぜんざいのひとにらみ。効果は抜群だった。
でもこれって少しは心配してくれてるってことだよね…?普通だったら連絡しろなんて言わないよね?

「ぜ、ぜんざいさん」
「なんや」
「ありがとう」
「…おー」

くそ、お礼ってのも気恥ずかしいな!
逃げるように食器洗いへと逃げた私は髪の毛で火照ったであろう顔を隠した。

ぜんざいがリビングから出ていく物音を聞いてから手を止めて長く息を吐く。
我ながら気持ち悪い。あー、もう考えないようにしようそうしよう。元気出たし!

心入れ替えて明日からまた仕事頑張りますよ、ええ。


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