30分は続いたであろう白熱したぷよ勝負。とても熱い試合だった。結果はDSの充電が切れてしまった切原の負けということになり、財前くんの勝利となった。でもね二人とも極めすぎなんじゃないかな…10連鎖とか普通できないよ…?

悔しがっていた切原は財前くんを勝負の達成感からか満足げに見据えていて。

「なかなかやるなーぜんざい」
「こんな長引いたん初めてや」

な、なんだこの青春の一ページです的な友情を築く二人は…!正直気持ち悪いぞ、きりは……………………ん、ぜんざい、だと…?

「あーぜんざいじゃねえ財前だ。紛らわしい名前つけやがって…」
「や、やっぱり財前くんが!」

ビシィッと犯人はお前だと言うように眼鏡少年よろしく財前くんを指す。

「ぜんざいだったのかー!」
「やーっと気づいたか」

今まで我関せずといった様子の仁王先輩がPSPから顔を上げそう言った。退屈だったんだなと読み取れる表情で欠伸をひとつ。

「鈍いわはむ太郎」
「いてっ」
「なっ…えっ…!?」

財前くんからはデコピンをくらったのだがこれがまた悶えるくらいに痛い。絶対アザできるよこれ、前髪で隠せるから良かったけど君は手加減という言葉を知らないのかね。つか財前くん…いーやぜんざいは既に私の正体を暴いていたのか…。

対する切原は目をまん丸くして私を上から下まで信じられないというふうに何度も目玉を上下に動かして見ていて、その様子から動揺しているのだとわかった。そりゃネットで仲良く狩りしてた奴がこんなんじゃ信じたくもなくなるわな。

「自分はむ太郎やったんか!どうりで千歳と親しげだったわけや」
「ちゃんと話したのは今日が初めてですけどね」
「え、まじではむ太郎…?平山が…?」
「ブンちゃんも鈍ちんぜよ」
「うるせー仁王!だいたいなんで言ってくんなかったんだよ」
「恥ずかしかったからです」
「意味わかんねー。本当にはむ太郎?」

丸井先輩は眉を潜めて訝しげな顔をしている。そりゃねーぜ丸井先輩、しかし顔面クラッシャーの意味をここで理解していただけたかな。
男のロマンの1つであるぴちぴちふれっしゅな美少女との出会いじゃねえんだよ!残念だったなコンチクショ!ロマンかどうか知らないけど。

「そういや金ちゃんがいっとったで、マネージャーのねーちゃんかわええなーって」
「いやん金ちゃんさん大好き!ぜひお友達から紹介してください!」
「ああ、はむ太郎だわ」
「これで理解されるはむ太郎って…」

思いもよらぬ金ちゃんさんサプライズにアドレナリンが放出され、興奮冷めぬテンションを維持し続けていたらぜんざいにシッペされた。これ、痛いんだぞ。
思わずすいませんでしたと謝ってしまうほど痛かった。デコピンといいさ加減しろよお前。

「何他人行儀んなってんねん」
「いやさ、ネットで何回も会話してたのに実際に会ってみると緊張しないか?」
「別に」
「あ、そう…」
「切原もいつまでビックリしとんねん。そんなに衝撃的なん?」
「そりゃそうだろ。平山に身近だったの幸村くん除いて赤也だったし、一緒のクラスだった分衝撃が半端なかったんだよな色々と!」

な、赤也!と丸井先輩に振られた切原は遠い目をしてそっすね、と呟いただけだった(何故にやにやしているの先輩…)。なんだよさっきから間の抜けた反応しやがって500時間やり込んだモンハンのデータ消されたわけでもないんだから「えーはむ太郎って平山だったのー!?びっくりー!」くらいのリアクションは取れやコンニャロウ!このワカメ野郎!

「くっそ切原お前ぷよ勝負でフルボッコしてやっからな!みんなでだけど」
「はあ!?」
「それかタンスの角に足の小指ぶつけちゃえばいいんだ!」
「地味な願望だな!」

鞄からDSとPSPを取り出して、どっちからやろうと迷ったけど忍足さんとポケモン交換してから勝負して(一勝一敗だったぜ)改めてみんなでぷよ勝負(もちろんみんなノリノリで切原をフルボッコ)、いじけてしまった切原に少しだけやり過ぎたと反省してモンハンに切り替えた。

ぜんざいと切原はともかく仁王先輩もプレイ時間が長かった。予想外にもほどがある。足手まといの私は後方でビクビク鉱石や虫を採取していた。4人(−1人)でやると大型モンスターも15分も掛からないで討伐してしまうから私はどれだけ多く鉱石を発掘できるかタイムアタックで忙しかったよ。いやー、武器防具の素材も多く手に入るし大人数でやると楽しいねえ。

「少しは働け」
「サーセン」

ここぞ仕返しとばかりにボウガン装備の切原が私目掛けて弾を打ってくる。地味に苛つく嫌がらせだこれは!



「はー、遊んだ遊んだー」

一斉下校の時刻になり放送が入ったので暇になって寝ていた忍足さんと丸井先輩を叩き起こして帰路に着いた。

「家近いん?」
「近くも遠くもないかな」
「そういや仁王ん家の居候いねーじゃん」
「柳生ん家に相方とおるらしい。引き取んなきゃダメかのう」
「引き取った方が身のためっすよ、ブチョーが何の制裁を下すか考えただけでも鳥肌っす」

切原が両腕で体を抱き締めればこの場にいた全員の顔が青ざめた。夏真っ盛りで蒸し暑いのに寒気もするよ。誰だアイストーネード詠唱した奴。自重しろ。

「…じゃ、私ん家こっちだから」

十字路に差し掛かりそう切り出してぜんざいに手招きする。ぜんざいはこの住宅街を珍しそうに見ながら隣に並んだ。

「あれ、金ちゃんさんもいなくないですか?」
「幸村くん家に白石といると思う。あ、迎え行くから俺もそっちだ」

丸井先輩もこちらに合流してさあ帰ろう温かいご飯が待っている、そう思い進もうとすると後ろからいきなり腕を引かれて振り返った。し、心臓に悪いんですが!誰だ!

「き、切原?」

そこには何故かムスっとした表情の切原がいて、もしかしてぷよぷよのこと根に持たれてる!?という心配が脳内を駆け巡ったがそれは杞憂に終わったようだ。

「携帯」
「ん?」
「携帯出せよ」
「へいルーキー!」
「赤外線」
「はい」

先程ぜんざいとやったようにアドレスを送受信しあった。不機嫌っぽかったけどどうしたんだろう?

「うし、さんきゅ」
「あ、うん、こちらこそ?」

携帯を戻してさっさと帰ってしまった切原の後を仁王先輩と忍足さんが追っているのを見送った。

それから私たちも我が家に向かって歩き出したが、終始ニヤニヤしてこっちを見てくる丸井先輩の顔面に何故かナックルパンチをめり込ませてやりたくなりました。



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