「結衣ー?精市くんよー」
「ええええ」

とうとう今日から合宿が始まるわけだが待て待て、朝っぱらから訪問とか聞いていないというかマネージャーを頼まれたからにはさすがにバックレたりしませんて精市さん。サボタージュをすれば行き着くところは一つだからね、精市さんの制裁だけはいやだからね!そんなに幼馴染みが信じられないのか精市さん。私は悲しい。

ていうかまだ着替えてないし髪も寝癖ついたままだし人様に見せられるような格好じゃ……

「なんでまだ寝間着なの、置いてくよ」
「ぎゃあああああ」
「幽霊でも見たような顔しないでよ。傷つくなあ」
「ちょ…!着替えるから!出てけ!」
「何を今更。昔は一緒にお風呂に入った仲じゃないか」
「それはそれ!今は今ー!」
「もう…外にみんな待たせてるんだから早くしてよね」

それを早く言ってくれたまえ精市くん。カーテンを引いてこっそり窓を覗くと朝日に照らされていろんな意味で輝いている色とりどりの頭が見えた。二階だからみんなこちらには気付いていないが…まじだ。まじで待たせている。

「出ていかないならあっち向いててよ、絶対こっち向かないでね、ダメ絶対だからね」
「そんな貧相な体見たって何とも思わないけど。じゃあ外でも見てようかなー」

精市はまるで自分の家で寛ぐかのように私のふかふか高級椅子を窓際にセットして窓を開けた。そして暢気に「いい天気だねー」と待っているレギュラーたちに声をかけていた。この部屋はさっきまで冷房がついていたから涼しいけど、外で待たされている身にもなってみろ、精市の発言はただ彼らを苛つかせる原因にしかならないのだよ。

そんな精市の背中を眺めながらいそいそと着替えを開始した。

「あっそうだ、これ四天宝寺レギュラーのリストだか「タイミング悪く振り向くんじゃねー!!」ふふふ」

お前ぜってーからかう気満々だろと思えるくらい精市の振り向くタイミングが悪かったので(ブラが見られ…た)条件反射で脱いだばかりのTシャツを投げた。しかしいとも簡単に避けやがったからTシャツは外に吸い込まれて落下していってしまったのだ。

とりあえず拾うのは後回しにしてちゃちゃっとジャージに着替えよう…。

「着替えたなら行くよ」
「背中に目でもついてるん…?」
「さあね」

こっちに背中向けて座ってるのに着替え終わったぴったりにそう言ってくるなんて精市ほんとに人間?もう人外に進化しちゃってるんじゃないかな。

親に行ってきますと言えば精市くんに迷惑をかけないのよ、と言われた。母よ、迷惑というか精神攻撃をくらってるのは私の方だったりするのだよ、口に出して言えないところが悔しいけど。

くそー親と精市が世間話始めたから早いとこTシャツ回収しよう。

「Tシャツごめんなさい」
「ああ、問題ない」

柳先輩に拾われたらしいTシャツは綺麗に畳まれていて、こまめにデータ取る人だし家庭的な面があってもおかしくない人だと思った。もし柳先輩の洗濯物取り込んでる姿見たら私は確実に惚れる。

「百式Tシャツって…」
「ガンダム好きな子にもらったんですよー5着あるからって」
「ありすぎだろ!」
「オタク魂を感じました。じゃあ戻してきます」

駆け足で部屋に百式Tシャツを置いて玄関に戻れば精市さんもスタンバっておられました。

「たまには全員で登校も悪くないだろ?」
「そっすね!」
「平山ん家って幸村くん家の隣だったんだなー」
「そうなんですよー」
「何か不満でも?」
「とんでもございません!」

即答スキルが身に付いた私はブラック精市をなんとかかわしている。その代わりすごく精神がすり減るぜ…。

「切原くんはよく朝早く起きれましたね」
「そりゃあ部長にあんなメール送られちゃあ…」
「ふふ、起きなかったらどんなお仕置きをしてやろうか楽しみだったんだけどなあ」
「………」
「…切原、いつも思ってたけどお前も苦労してるんだな…!」
「平山も…!」

今ここに“対ブラック幸村精市の苦労を分かち合おう”の会が設立した。活動日はお互いブラック精市に恐怖を感じた時、メンバーは随時募集中だよ!

「ばかなことやってないで行くよ」

私と切原は瞬時に背筋を伸ばしてみんなの後ろに続いたのだった。

 


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