忌まわしいテストが終わり気の抜けた日々を送っていれば終業式が訪れる。

期末が終われば採点業務日やら成績作成日なんかで休み同然だからこの一週間は無駄なくネトゲに費やした。みんなは部活が忙しいらしく夕方からのINだったから、一日中狩り続けていた私との差がけっこう開いてしまっていた。

調子に乗ってまたも徹夜してしまった私は終業式でふらふら真っ直ぐ立てなくて後ろの友人に寄りかかったりと迷惑をかけてしまった。サボればよかったわ…。

校長のクソ長い話も終わり半分寝たまま教室に戻ったら続いて担任の話。ここは当然机に伏せて眠ります。
それから成績表を配られたりなんだりで総務の挨拶でHRも終わりを告げた。

よっしゃー帰れる!と魂が入れ替わったように復活したわけだけど、なんか、嫌な予感、する。

「………」

「ねえ、あれ幸村先輩じゃない?」
「きゃー!ほんとだ!赤也くんに用事かなあ?」

背中に精市特有の視線がぐさぐさ突き刺さっている気がするが、私は知らん。何も知らん!

がちごちと動かない体に鞭を入れて精市が覗いている後ろドアではなく前のドアから脱出を試みた。
絶対精市の眼差しには石化効果入ってるって!

「うっぷ!」
「どこに逃げる気じゃ?」
「うわあセクシーほくろ先輩…」

馬鹿な!前のドアにも魔王の手先が潜んでいただと!

まあ薄々予感はしてたけどね…女の勘をなめちゃいかんよ。
これで仁王先輩にぶつかるのは二度目になりますな。

あからさまに怪訝な顔をしてそう言えば先輩は何とも言えない顔をした。あ、この呼び名あまり気に入ってないんだ。

「よし、結衣も捕まえたし行こうか」
「精市さんせめてメールで連絡してください」
「メールだけだと逃げるだろお前は」
「ばーろー後が怖いから行くに決まってんだろ!」
「誰に向かって口を聞いてるのかな?」
「申し訳ないです」

何様俺様精市様だよお、とは口が裂けても言えない。

生まれてこの方17年、ブラック精市には未だに慣れないんだなこれが。慣れたくもないんだけど、精市の右に出るものはいたりするのだろうか…。いるとするならば是非とも拝みたいものだ。

「今日は全員集合なの?仕事なら柳生先輩にバッチリ教わったつもりなんだけど」
「大事な話があるからね」
「ふーん」

なるべく今いるメンバーの影に隠れて女子の熱い視線から逃れているのだが、さすがテニス部、人気ありすぎだぜ!
四方八方からハートの嵐が飛んでくるから避けるのも大変、壁は精市と仁王先輩と切原しかいないから見つかってしまっているかもしれないが…。今回呼び出しくらったりそれ以上のことをされたら引きこもる自信あるからな精市のバッキャロウ。

「切原もいつもこんな熱視線を潜り抜けて学校来てるの?」
「え?お、おう…ああでも別に嬉しくねぇっつーか…」
「嬉しくないの?」
「俺は好きな奴がいればそれでいいんだ」
「ふむふむ。切原は純粋だな」
「初めて言われたぜ……」
「結衣も罪な女じゃのー」
「う…ん?」
「仁王先輩ー!?何名前で呼んでんすか!」
「うるさいよ」
「「「………」」」

魔王様の一声は最強です。

それからお口にチャックをして部室に到着すれば、レギュラーは全員集合していた。

「精市、話とはなんだ」
「腹減った〜」
ぐぎゅるるるる
「腹の虫を鳴らすとはたるんどるぞ丸井!」
「お前のKYさがたるんでるよ。あ、丸井はお腹ね」
「「………」」

毒舌が絶好調の精市に黙り込むお二人。ジャッコー先輩なんて青ざめてるしなんか部室なのにブリザード吹いてるよ…。
よくみんなテニス部続けてられるよね…!これは尊敬に値するレベル。

「えーと話っていうのは夏休みに来てくれる四天宝寺のことなんだけど」
「うむ」
「急な合宿だったからホテルの予約取れなかったんだ。えへ」
「………」

えへ、じゃねえよおおおおおおおおおお!!!べろをちろって出すな!かわいくねえんだよおおおおおおお!!!

ほら!あの柳先輩までもが石のように固まっているよ!うわ、開眼しおった…!

「だからね、経費削減・親睦を深めようの名目で俺たちの家に一人ずつ泊めてやりたいんだけどどう?ていうかそうしないと四天宝寺の奴ら野宿だから異論はないよね?はい決まり!」

パンッと手を叩いてまとめあげた精市さん。いやいやそんなにこやかに言われても。

言葉も出ない事情がなかなか呑み込めないなかこの沈黙を破ったのは眼鏡の王子様、柳生先輩だった。

「四天宝寺の皆さんは確か…9人でしたよね?私たちは8人しかいませんが…」
「何のための結衣だと思ってるの。これを入れればぴったりだよ」
「ナンデストー」
「ちょっと待ってください、平山は女子じゃないっすか!俺んちで二人引き取りますよ!」
「だめだ。二人にすると負担が重くなるだろ?赤也の好意はありがたいけど、それは却下だ」
「う…」
「す、すまん切原、嬉しかったけど(精市には逆らえないし)臨時にマネージャーにもなっちゃったし…大丈夫、多分」
「お、おう…」
「結衣ならそう言ってくれると思ったよ、誰の家に誰を泊めるかは四天宝寺がきたら話し合って決めようと思う」

それじゃあ部活、始めようか。

そう言って着替え始めた精市に反論するものは誰一人としていなかった。

とりあえず私は外に出ていようと思う。あわよくば帰…「らないよね?」…もちろんですとも。

…うちん家、空き部屋あったっけかな。

 


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