雨はもう降らなくなった。そのかわり、雨が忘れ物をしていったかのように空気はいつまでも湿っていた。急に暑くなったけれど、じめじめした空気はそれでも乾かない。不思議な話。

病室で迎える毎日は、きっと彼に伝えそびれているだろう。この焼かれるような暑さのことも、なのに不思議なくらい水を吸った空気のことも。



「幸村。」


真っ白な廊下を抜けて、病室の扉を開ける。そこには、また真っ白な空間が広がっていて、そして、


「リハビリ中は来ないって言ってたじゃないか。」
「うん、ごめん。でもね。」


ごめん、ごめんって謝ることしかできなかった。だって彼は自分の足で立ってこっちを見ていたのだから。私は待ってたんだ、ずっと、この日のこの瞬間が来ることを。ああ、こんなにも泣き続けてたら、なんでそんなに泣いてるの、ここは笑顔をみせるところだろうって笑われちゃう。でもね、あなたを見てたら、こんなに涙があふれてくるの。空気が乾かないように、私の涙もこの暑さなんかじゃ乾かないみたい。


「ありがとう。」


そう言って微笑んだ彼を見たら、病院だっていうことを忘れて、声をあげて泣いていた。するといつもみたいに君の手が僕の髪を優しくなでるんだ。いつもみたいに。ただ、違うのはあなたが自分の足で立っていること。それだけなのに、こんなにも、嬉しいの。





移る季節に置いて行かれても、

暗闇はとっくに溶けていつしかあなたの一部になってた。

みんなが眠る夜明け前はもういない。




さあ、もうすぐ



朝が来る







YU*KIちゃんの「朝が来る」にインスピレーションを受けて。あれです、オマージュ的な…。にしてはすみませんでしたとしか言えませんです。すみませんでした(T_T)


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