お互い向き合うように腰掛け、しばらくの沈黙が続く。机の上には彼の律儀に揃えられた両手がのせられていた。その男性とは思わせない美しい指に息をのむ。包み込むようにして自分の手を上から重ねると、自然と涙があふれてきて、行き場を失ったそれはぽたりと頬を伝って落ちていった。


「別れよう。」


ぐさりと音をたてて突き刺さる言葉。わかっていたのに、いざ言われるとこんなに辛いなんて。いや、きっとわかったつもりになっていたかっただけなんだ。お互いこれ以上続けても意味がない、どこかでそんな思いを抱きながら、そんなことはないと信じていたかった。違うと否定してほしかった。


以前あなたは言ったよね。確率は蓄積データからその行動をシュミレートして得られたいくつもの予想を数字にしたものだって。だから99も1も結局1つずつは均等に起きる出来事だって。ねえ蓮二、得意の確率で私たちの未来を予測したなら、その確率を教えてよ。たとえ1パーセントでも、その1が起きたなら予測は覆せるんでしょ。

人の心がデータをいとも簡単に覆すのは、人が上手くそのパターンを当てはめていくからだと、教えてくれたのは蓮二なのにね。



ねえ、お願い、行かないでよ。



そんな確率、絶対宛になんてならないんだから。


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