夏ももう終わりに近づいていたが、それでもまだわずかに賑わいを残した海岸では、みな名残を惜しむかのように散々としていた。夕日が西から差し込む。潮風が涼しく、ああもう秋はすぐそこにいるのだなあと実感する。



「清市っ」



目の前には、スカートが濡れないようにと裾を持って海岸を歩く愛しいなまえの姿。


「見て!桜貝だ!こっちにはワカメ!あははっ赤也にそっくり」


ほら、そんなにはしゃぐと危ないよ。


「あっ、スカート濡れたあ…。」


ざばんと今までよりも高い波が岸に流れ着くと、なまえのスカートをわずかに濡らしていった。やっぱり、調子に乗るからだよ。そう言って笑えばぷいとそっぽを向いてなまえはさらにスカートを捲りあげた。白くて細い足がのぞく。たったそれだけの仕草なのに、それらすべてが愛おしく思えてしまうんだから本当に不思議だよ。なまえがすること、全部ぜんぶ、俺のなかに募っていく。そしてそれはほのかに温もりをのこし重なっていくんだ。


「ね、精市」

「なんだい?」


なまえは一通り散歩を楽しんだようで、俺の方へ駆け寄ってくると隣に腰を下ろし、ぴたりとすり寄ってきた。全く、かわいいなあ。


「来年もまた、この時期にここに来ようね。電車乗り継いで、駅から歩いて、ここまで来よう。」


「ああ、そうだね。」


なまえと来た海には、もう夏の眩しさやにぎやかさなんてものは欠片も残ってなかったけど、

水着でも、浮き輪でも、ビーチボールでもなくて、

それでもきらきらとしたこの風景を見に二人で、また。


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