「いっしょに痛くなりたい、できるなら同じ強さで」の続き










「彼女できた。」


隣に寝そべっていた私は思わず起き上がり、はあ!!?と叫んでしまった。あまりに素っ頓狂な声を上げてしまったせいか、呆れ顔で仁王も体を起こした。でもこの間えりちゃんに振られたばかりなのに、立ち直り早すぎじゃないのか…。まさか、えりちゃんが彼氏と別れて、仁王に切り替えちゃったとか?やっぱり付きあおっか仁王くん、みたいな?ずんと鈍いけど確実に突き刺さった痛みに体が震える。いや、待って私だって仁王のことはもう諦めたはずじゃないのか。なのに、なんでこんななってるんだ。

「えっと…、いつ?」

「ついこの間。」

「立海の子?」

「ん。」

「…同い年?」

「さあて、な。」


当たり障りのない質問を繰り返していれば、最後にははぐらかされてくっくと笑われた。うわあ、むかつく。というかさ、なんでこんなに焦らされなきゃいけないのよ。


「わかった。もーわかった。よくわかった。仁王がえりちゃんと仲良くやってるのはよーくわかったから!!」


ぐいっと隣にいた仁王を手で押しやる。あーもー悔しい。えりちゃんのばーか。私の方が、ずっと仁王のこと好きだったのに。


「なあ、なまえ」

「なによ、アンタなんかさっさとえりちゃんのとこ行っちゃえ。」

「なんで泣いてるんじゃ?」


手で頬を撫でてはっとした。気づかなかった。頬に伝うはまだぬくもりを残した私の涙。なんで私泣いてるの。わけわかんない。俯いたまま、ぐいと腕で涙を拭う。これじゃあ、私が仁王のこと好きみたいじゃないか。


「泣いてなんかない。」

「ほう、じゃあ今腕で拭ったものはなんじゃ?」

「汗、暑いの!いますっごく。」

「顔、真っ赤じゃもんなあ。」


はははと声を上げて笑われた。悔しい、恥ずかしい。なんなのよ人のことからかって。何にも知らないくせに。仁王なんて嫌いだ。だいっきらい!


「くっく…!はは、あー嘘じゃき。今の全部。こんなのに引っかかるとはの。」


は?嘘?相変わらず目の前には笑い転げる仁王の姿があった。まさか、私乗せられたのか…?


「なんじゃ、俺にカノジョができるとなまえちゃんは泣いてしまうんか?」

「そ、そんなこと…!」


やってしまった。私はやっぱりコイツ相手に駆け引きは上手になれない。どうせばれてるんだ。もう諦めて、


「…あり、ます。」


素直になろうじゃないか。

頷けばすっと仁王の腕が伸びてきて、私の髪をさらう。あーあ、悔しい。今日は本当に悔しい。私のペースは乱されっぱなしだ。




「なまえ、すいとうよ。」




気づけば仁王の腕の中、呼吸なんてできるわけなかった。


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