全国大会も終わり、暑かった夏はあっという間に過ぎていった。 全国大会は惜しくも準優勝 に終わったけれど、全力でぶつかったあの夏にみんな悔いはなかった。最後、幸村の試合が終わったあとはみんなで号泣。そのときになってようやく今まであったこと全部消化しきって、やっと過去に変えることができた気がした。私だけじゃなくて、みんなに漂ってた何かが変わった気がしたんだ。

それと、一つずっと心に引っ掛かっていいることがある。あの場のノリだったとはいえ、 私、幸村に抱きしめられんだよなあ…。ただビックリしただけであのときはなにも思わなかったけど、 今になっては思い出すだけでとてつもなく恥ずかしい。はーあ、何だったんだろあれは。もしかしたら彼からしてみれば、挨拶程度のことだったのかもしれないけど(外人か)、こっちからしてみればそんな免疫ないわけだし、府とした瞬間あのときの出来事が頭に浮かんでは、恥ずかしくて消えてしまいたくなる。だって、あんなの恋人同士がすることなんじゃないの!?…幸村の体は、思っていた以上に逞しかったな…。いつも見ているよりも大きく感じた。幸村の匂いはなんでだろう、安心する…、それに終業式のときだって、なんだかんだで私のこと心配してくれたし。もうだいぶ時間は経ってるはずなのに、色がついてその時の体温も空気も匂いもこんなにも鮮明に思い出せてしまうのは…ってなに考えてんの私!?ちょっと自分にびっくりだわ!!変態か!!あーなにこれ顔から火がでそうになるくらい恥ずかしいありえないっ。やめやめ!考えるの禁止!ダメ、絶対!だめ!

ばちんと自分の頬を叩くと、隣にいた幸村に、なにしてるの?とのぞき込まれて、またもや心臓がびくんと跳ねる。今は大道具の動きを決めるためみんなでキャストの通し練習を見ているのに、ああ、なにやってんの私。全くこれじゃあ挙動不審極まりないじゃないか。

「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰だい?」
「それは、白雪姫でございます、お妃様。」

はい、さっきのことは忘れて、気を改めていこうと思います。オーケー?この時期は立海一の行事とも呼べる海原祭を間近に控え、学校中が活気で溢れている。残り1か月を切り、今はどこのクラスでも最終段階に突入するころだ。

私たちのクラスの進度も結構いい感じで各スタッフはいよいよ追い込みに入った。大道具分担の小道具は調整と補強をすればもう完璧だし、大道具は最後の背景パネルを一枚とと木を一本作れば完成だ。あとは運搬分担と黒子の転換練習だな…。やることはまだまだ山積みだけど、毎日が充実してるよ。

「おいしいおいしい、リンゴだよ。お嬢さん、おひとついかがかね?」
「いいの?ありがとう、おばあさん。」

ここは魔女が白雪姫にリンゴを渡す大事なシーンなんだけど、…それにしても、白雪姫役のみーちゃんはほんと可愛い。なんなのあの可愛さ、犯罪だよ。みーちゃんが微笑めば男子だけじゃなく、女子もイチコロだ。私もあんな風に可愛くなりたかったなあ。身長は私と同じくらいなのに、みーちゃんはなんであんなに可愛らしいんだ。羨ましい。

「ああ、なんて美しい姫なんだ。」

ああ、小林くんったら頬を赤く染めちゃって、本気っぽいぞ。見てるこっちがむず痒い。…好きなんだろ、みーちゃんのこと。なんだよ、早く言っちゃえよ!好きだって言っちゃえよ!

「…痛いよ、侑紀。」
「は?」
「声に出てる。」
「!?」

隣の幸村くんがまたもや私にちょっかいかけてきたよ。さては私のこと好きなんだな?……なんてのは冗談だけど、小林くんが苦笑いしてこっちを見てた。ああ、うん。まじごめん…。





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