広がる青空の下、立海は順々と全国大会を勝ち進んでいった。そして最終日である今日は、ついに決勝戦だ!

S1、真田くんの対戦相手は青学の手塚さん。

激しい攻防戦、2人の並みならぬ実力は、あっという間に観客をその場に釘づけにした。周りは頂上決戦だと盛り上がっているけど、その根端となる真田くんと手塚さんの因縁は、私も本人から聞いたことがあった。真田くんは2年のとき同じクラスだったのだけど、偶然、総合学習の班が同じになった。


「テニス部って全国レベルなんでしょう?しかも真田くんはそのレギュラーときた。」
「何が言いたい。」
「普通1年からレギュラーになんてなかなかなれないじゃん?テニスに何か特別な思いでもあるのかなって思ってさ。」

「倒したい相手がいる。それだけだ。」



話すことがなくて何気なく振った話題だったけれど、そのときの真田くんの真剣な眼差しは今でも覚えている。その相手が手塚さんだと知るなんて、あの時の私じゃ想像もできなかったな。真田くんはどれだけこの試合を待ち望んでいたのだろう。あのときの真田くんの眼を知っているからこそ、この試合がどれだけ重いものかわかる。激しい接線も漸く中盤戦に入った時だ、ベンチに座った幸村が厳しい顔をして口を開いた。

「雷を酷使しすぎたな。」
「え…?」
「流石の真田でもあれだけ立て続けに使えば、脚に限界が来ない方がおかしい。」

幸村が表情ひとつ変えることなく呟くものだから、まさかと思って真田くんを見れば、足が鬱血して腫れ上がっていた。そんな…!手塚さんの腕も酷使しすぎたせいか酷く腫れ上がっている。もうテニスが出来なくなる、そんな忠告を受けても試合を止める様子はなく、真っ向勝負で挑む2人の姿。それだけ、お互い譲れない試合なんだ。

「いいだろう。貴様の覚悟、受けて立とう!」

真田くんは手塚さんの紛うことない意志を確認すると、渾身の力を込めて返球した。お互い一歩も譲らず、試合はどんどん白熱していく。



「ゲーム、青学手塚!5-4!」

手塚くんがゲームを先取したところで休憩を挟んだ。私が急いで真田くんのアイシング用の氷を控室から取って戻ると、幸村がとんでもない爆弾発言をしたのだ。

「真っ向勝負を捨てろというのか…?」
「すべては立海三連覇のためだ。」

「そんな、幸村…っ!」

後ろ姿からでもわかるくらい、動揺が隠しきれない真田くんを余所に、幸村ができるよねと釘をさす。ちょっと幸村、それは言い過ぎじゃないの。彼の試合を決めるのは、彼自身じゃないのか。

「侑紀、アイシングの準備はできたのかい?」
「…はい。」

そんなこと言っていないでさっさと仕事をしろとでも言いたげな幸村の様子に怯んで、それ以上は何も言えなかった。きっとみんな言いたいことは同じなんだ。だけど言えないんだ。それ以上に、みんな立海三連覇にすべてを賭けてきたから。だから、せっかくのチャンス、こんなところで負けるわけにはいかない。





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