ミーンミーンと蝉が鳴く声が日に日に増していく。彼らの余命はなんと一週間らしい。そんな中、メスをみつけて子孫を残さなきゃいけないだなんて、なんてストイックな世界に生きているんだ。歩いているとこっちに向かって飛んでくるのはやめてほしいけど、そんな彼らのことは少し、尊敬してたりもする。



「というわけで、今日の授業はここまで。」



カツカツっとチョークを鳴らして板書を書き終える先生。あー公民、またぼーっとしちゃった。マネージャーを引き受けてからというもの、朝は早いし帰るのは遅くなるわでそろそろ疲労のピーク。授業中も部活のことを考えたり、ぼーっとすることが多くなって勉強に身が入らない。んーでも、まいっか…。



「テスト範囲はp.42から今日やったところまでな。」



うげえええと叫び声や不満不服の声が上がる教室。あれ、ちょっと待って、うそだ。テスト範囲言われたってことは、まさか…、



「今日でテスト1週間前きったから、ちゃんと勉強するように。期末は範囲広いからなー。」



はーいオワター。ショックのあまり思わず手からシャープペンを床に落とすと、隣の幸村が、大丈夫?なんて微笑みながら私の手にシャープペンを戻した。いや、なーんも大丈夫くないから。オワタだからね。はは、あははは。










溶けてしまいそう、煌く夏










予習復習はできるときにさらっと、テスト前は2週間きってから少し真面目に勉強する。これがいつもの勉強スタイル。だった。だったのだ。でもここ最近、誰かさんのおかげで私の日常はガラッと変化してしまい、予習も復習も、はたまたテスト前の猶予までおざなりにしてしまう始末。知ってるかい、普段の余裕を知ってるやつほど、追いつめられると弱いんだ。というわけで私は今大いに焦っている。


「なにやってるのかと思ったら、テスト勉強?」


とこんなときに限って声をかけてくるのは、決まってる。ヤツしかいない。何も隠さないぞ隣の席の幸村精市だよ!んーあれーおかしいな、私今『話しかけるなオーラ』をこれでもかってくらい全身で出してるはずなんだけど。ちなみにこれを出すとあの真咲でさえ「忙しかったら後でもいいんだけど…」って切り出しから始めるのに。なのに幸村といえば私の生死を争うテスト勉強のことを「何かやってる」程度にしか認識していなかったのだ。いやこの時期必死にやることなんてテスト勉強に決まってるじゃん。他に何するんだよ。クラスメートの反応さえ幸村が復帰した初日に比べ大分落ち着いてきたようで、いちいちきゃーきゃー騒ぐ女子はもういないが、幸村としゃべっているとばっちり視線を感じるのは今も変わらない。全く、監視されてるようでやな気分。


「ここ最近忙しかったから、テストの存在をすっかり忘れてた。このままじゃ私、確実に追試。やばい。」
「それは深刻だね。」
「うん、まあね。そういえば幸村ってさ、テスト受けるの?」


深刻だねって言った幸村の顔が全然深刻でないことにはもう慣れっこである。全く他人事だと思って…、まあ幸村からしたら他人事だけどさ。まあいいや。それより、彼自身はテストを受けるかと最近気になっていたことを聞いてみた。はっきりいって幸村が学校に来た日数は期末テストを受けられるほどに達していない。これでテストを受けさせるなら、先生たちはそうとう鬼畜だもの。


「ああ、受けるよ。」
「ですよねーって、…は!?」


今の下りは明らかに免除されたよって下りじゃないのか。そんな爽やかな返事されたら誤解するじゃん!というかテストどうやって受けるのよ、まさか教えてくれるよねフフフってこと!?いやあああ無理!!


「リハビリ中に、蓮二がノートを届けてくれていてね。」
「…あっ、そうなんだ。」


あーよかった本当によかった。こんな状態で幸村に教えるなんて状況になったら私、いくら命があってもたりないわ。蓮二様様だ。彼は成績も常にトップだとよく耳にするし、そんな彼のノートならテストだって太刀打ちできるのだろう。むしろ私が頂きたいくらいだもん。


「もしかして、教えてくれって俺が泣きつくとでも思った?」
「はあ!?というか、そんなことされても絶対教えないし!」
「そう。逆に泣きついてくるのは侑紀のほうだと思うけどね。」



ぷっつん。んなわけあるかい!


「あ、そうそう言い忘れてたけど、追試は全国大会と被るからね。勿論大会を優先させてもらうけど。」


…え、何それちょ、待って聞いてないんだけど!!





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