教室につくと、先生はまだ来ていなかった。はーよかったー、次は山Bの授業だから、また怒られるところだった。危ない危ない。さっきの出来事は忘れようと何事もなかったのかのように席に向かう。だけど、その私の様子が気になったのか幸村がさっそく鋭いつっこみをいれてきた。 「どうかした?落ち着かない様子だけど。」 「え?あ、いやあ、べっつにい〜」 できるだけ平静を装ったつもりだったのにこいつは…!もうこれ以上はバレるわけにはいかないんだから、迫真の演技ではぐらかした。うん、今のはなかなかだった、これなら私も演劇のキャストになれるんじゃないかな。 ――そして、時は変わって放課後 はてさて、一体なぜこうなったのか説明してもらいたい。 今、私の目の前にはなぜか、なぜかブン太とジャッカルがいる。私はこの2人から逃げて、無事学校も終わらせ学祭の練習も終わって今日は私の演技力もあって何事もなかったかのように帰路についたはず。なのに…、帰り道ふらりと昇降口を出れば2人の待ち伏せをくらい、そのままファミレスに連行され今に至る。あー明日も早いから早く家に帰りたいのになあ。まあ、どうせジャッカルのおごりだろうからいいんだけど。あ、このケーキおいしい。 「んで、どういう成り行きからミスコン候補に決まったんだ?」 「だから、しらないって。あっちが勝手に押し付けてきたんだもん。」 ブン太が問い詰めてきたのでありのままの事実を述べれば、それだけかよーとブン太は不服そうな声を上げ、目の前にあるケーキを頬張った。ついでに私のも。あ、こら!勝手に食うな!…もう、だから世の中そんな面白い話ばかりじゃないんだってば。あーあなんだよつまんねぇ。てっきり侑紀が自ら立候補したのかt(以下略)とブン太が一通りわめき終わると、隣から、んん?、とジャッカルが疑問を浮かべたような声を漏らした。 「そういえば、今年はまだミスコン出演者の募集してないんじゃないか?」 「ああ、確かに。聞かねえなあ。」 そうだ、いつもなら学祭2週間前になれば誰々先輩がミスコンに出演する、あれ何々ちゃんはでないのかといった類の話で持ちきりだった。なのに今年はミスコンの話さえ一切聞かない。みんなが練習に打ち込みすぎていてミスコンどころじゃない…、なんてことはないだろうし。 「いつもって、もうこの時期にはもう盛り上がってなかった?」 「生徒会のことだ、きっとそのうちとんでもない種明かしをしてくるぜ。」 「なるほどな。集客作戦のひとつってわけか。」 「なにそれー。それに私、一言もやってもいいなんて言ってないんだけどなあ…。」 はあ、と思わず盛大にため息がでた。私自身のことのはずなのに、私の意思は無視されてるってどういうことなの…。やっぱりちゃんと断らないと。今日考えないようにしてた一番嫌で厄介なことを思い出してしまった。 「でもあの様子じゃ、いくら侑紀が断ったところで後には引けないようにドカンと仕込んでくると思うぜ、俺は。」 「えー、やだやだ!やらないから!」 「だったら、ちゃんと断った方が身のためだぜぃ。」 「うん、そのつもり。」 そうだ、2人の言う通り。絶対何かやられる前に断らないと…、取り返しのつかないことになっても困るもんな。みんなにばれる前になんとかしないと。と、その前に。 「あの、お2人さん、このことは他言無用でお願いしたいのですが…。」 「ああ、いいぜ!」 「おう!言わねーよなあ、ジャッカル?」 「「というわけで」」 目の前の2人が目を見合わせてにやりと笑った。ま、まさか…。 「お会計¥1260になります!」 はい、私のおごりでしたー。はじめっからこれが目的だったんだなコノヤロウ覚えときなさい! シロップマジックは終わりを知らない |