―昼休み、部室にて

「さあ、今年のテニス部は何をやろうか?」
「俺、劇がいいっス、部長!」
「えー模擬店がいい!」

ただいま、部室にて海原祭の出し物について会議真っ最中。その年その年でやることは違うが、毎年テニス部も海原祭に参加している。大会も終わって落ち着いた頃になると、こうして話し合いが行われるらしい。やっぱり学園祭と言えば模擬店よね。食欲の秋!食べ物の秋!最高!

「俺としては、侑紀と丸井の漫才もアリかなって思うんだけど。」
「「はあ!?」」
「できない?漫才。」

幸村は、とんでもない提案をし終えると、にこっと微笑んでこっちをみてきた。どっちがボケでツッコミなのか想像するだけでも楽しいよって言われたけど、ごめん私は想像しただけで気持ち悪くなったわ。

「俺と侑紀で漫才、って冗談だろ幸村くん。」
「そう?衣装も作ってあげるよ、ねえ真田。」
「和装でいいなら構わんが。」
「は?ってか、なんで真田まで乗る気なんだよ!」
「はい、決まり!模擬店で決まりね!はい、けってーい!」

パンと手を叩きお開きにしました、私が。


結局その後いろいろ話し合って、テニス部の出し物はせっかくだから喫茶店形式でってことに決まった。だけど、今日はもう一つ、面倒事が待ち受けていることをあの時の私は知らない。(できることなら教えてあげたい。そしてなんとしてでも回避してほしかった!!)

「見つけた、松山侑紀さん!」
「あ、あんたは…!」

教室へ向かう廊下を一人で歩いているときだった。フルネームで私を呼び止める女の子。もうすぐ授業も始まる時間だったから、廊下にいる人もほとんどおらず、しかも名前まで呼ばれてしまったのだから逃げる術もない。…というか、

「誰だっけ?」

「っておい!」
「いや、考えてみれば初対面だし!」

そうそうこのくだりは明らかに違うだろ!なんか私が悪いみたいになってるけど私なんにも悪くない!なんか見覚えがあっただけだもん!

「私を知らない生徒がこの学校にいるなんて!…まあいいや。私は立海大附属中、生徒会長の季科杏子。松山さん、今日は折ってお願いをしにきたんです。」

ああ、なるほど。見覚えがあると思ったら生徒会長様か。でも生徒会長という肩書を使って、直々にくるんだから、そのお願い事というのは面倒くさいことには違いない。ささっと断っちゃお。面倒事はごめんだもの。

「生徒会長さんが、わざわざ私に何の御用で?」
「松山さん、毎年行われる生徒会主催の海原祭でのメインイベント、ミスコンはご存知ですよね?」
「うん、知ってるけど…。」

あのやたらキラキラした、派手で人の目をひくイベントでしょ。真咲は毎年楽しみにしてるみたいだけど、私はまるで興味なかったな。実行委員の人数が足りないから、観客になりそうにない人あたってる、とか?

「それに出演してほしいの。」
「…って!?ミスコン?何で私がっ」

えええまさかの出演者の方!?なにそれ、ありえないでしょ!?なんであえてのもうほーら、厄介事だ!生徒会なんてそんなもんだろうと思ってたよええ、そりゃあもう!

「そりゃあ、ちゃんとミスコンを成り立たせないといけないからね。あと、このことは実行委員会の方ではすでに決定事項ですから。あがいても無駄だよ。」

とんでもないセリフが聞えてきた気がするんだけど、気のせいかなあ?決定事項って何それ、なんかの聞き間違いだよね?ありえないよね?だって私、許可した覚えなんてないし!

「あ、本礼のチャイムがなったので、私は失礼します。引き受けて下さってありがとう松山さん。それではっ!」
「え、だから私いいだなんて一言も言ってないんですけど!ちょっと、あ、こら、待てってば!!」

本礼のチャイムが授業開始を告げると、季科杏子はものすごい勢いでその場を去っていってしまった。ああ、そういうことだったのか…。

「へえー、お前がミスコンねえ。」
「いいんじゃないか、侑紀なら。」

なんで

あんたたちが。

「まさか、今の全部聞いてた?」
「おう、あったりめーよぅ!」
「一部始終な。」

誰にも知られたくなかったのに、そこには嫌らしく笑うブン太と爽やかに微笑むジャッカル。全部、ではないようだけど、どうやらミスコンの話はばれてしまったよう。あー最悪…、よりによってなんでこいつらに。

「まだ出るかは決めてないもん。」
「でも半ば強制な感じだったぜ?」
「だーけーどっ、出るかどうかは私が決めることでしょ?」

ブン太とジャッカルはまだ何か言いたげだったけれど、さっさとこの話題から逃げだしたかった私は、授業始まるからもう行く!と言ってその場から逃げ出した。

あーもう、いまの全部夢ならいいのにっ!





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