店を出ると、日はすっかりと暮れ辺りは真っ暗になっていた。 「結局買いすぎちまったな。」 「でも俺、このグリップ欲しかったんだよなあ。やっぱり誘惑には勝てねえ…。」 そう言ってブン太は袋から、先ほど購入したグリップを取り出す。普段自分が噛んでいるガムと同じ緑色だ。みなそれぞれ必要なものが買えたようでご満悦のよう。なんだ、男の子だって女の子と一緒で買い物好きなんじゃんね。 「侑紀さん、お持ちしましょうか?」 「あーうん、大丈夫だよこのくらい。」 ヒロシが私の買った救急グッズに気づいて手を差し出してきた。やはり君は紳士だよ。でもこれ、見た目の割には全然重くないんだ。見た目の割には。 駅に向かう途中、川に架かった橋を通っていた時だった。ふいにどこからともなく、ひゅるるるるっと音がしたかと思うと、どーんと夜空に光の花が咲いた。 「うわああっ花火、花火っスよ!俺、今年初めてっス!」 どうやら近くで花火大会が行われているようで、はしゃぐ赤也につられて、みな橋にもたれかかって花火鑑賞会が始まった。打ち上げ場から少し離れているせいか人は少なかったが、見るには充分な場所だ。どんどんと音を立てて打ちあがる花火は一瞬一瞬輝きを放って、ふとテニスをするこいつらに重なった。よっぽど重症だな、私。 「常勝、立海大!」 花火が揚がる夜空に大声で叫ぶ。そう、叫んだのは紛れもない私で、みんな驚いた顔をしてこちらを見る。少し呆れた顔で私を見て微笑むと、それぞれまた花火に向きなおった。 「常勝、立海大!」 「「「「「「「「「常勝、立海大!!」」」」」」」」」 全員の声が空いっぱいに響き渡る。花火の音にかき消されながらも、その声はどこまでも届くような気がした。 「フフ、これで死角はなし、だね。」 幸村が言い終えると、みな誰からともなくその場から足を進めだした。そうだ、こんなところで立ち止まっている場合じゃない。私たちの夏は、まだ始まってないのだから。 ノンストップブルースプリング よし、行こう、全国へ!勝つのは立海だ! |