これは、全国大会を間近に控えたとある夏の日のお話。



湿気を存分に含んだ空気が体全体を生暖かく包む。きもちがわるい。ただでさえ暑さで倒れそうなのに、飽和した空気は重く体にのしかかってくるものだから、体が悲鳴を上げている。空気がこんなにも湿っているせいで、せっかく体温を下げようと噴出した汗も、蒸発する行き場をなくし、服に吸収されては、体はさらに重くなる。


「はあああ〜っ、あっつい…。」


夏至はとうに通り越したものの、夕方になっても沈むことをためらう太陽を手で遮る。目の前にあるテニスコートではレギュラー陣が試合をしていた。大会前とはいえど、この気温でこれ以上続けたら、みんな倒れてしまうのではないか。夢中になってるキミたちにはわからないかもしれないけれど、今相当暑いからね?大丈夫かーい?

はあ、とため息をついて項垂れる。みんなすごいや。午前中はクラスの学園祭練習に顔を出し、午後はずっと部活の練習に参加。私はマネージャーだからずっと外で仕事をしているわけじゃないけど、毎日毎日もうくたくただ。それに比べ、彼らは…。体力じゃやっぱり敵わない。


「そろそろ休憩にしよう。みんな、今日は暑いから水分補給はしっかりとするんだよ。」


幸村が汗を拭いながら全員に指示をだした。みなそれぞれ返事を返し、コートから上がってくる。すかさず、私はタオルとドリンクの入った籠を持ってみんなの元へ走った。

「お疲れ!!」
「おっ、サンキュー侑紀!はあ、のど乾いたぜぃ…。」

順々にドリンクとタオルを手渡すと、みな待ってましたとばかりに受け取っていく。幸村の言うとおり、水分補給はしっかりと、ね。

「お疲れ、幸村。」
「ああ、ありがとう。そういえば、大会に持っていく救急箱の中身はもうチェックした?」
「あ、してないや。それにこの間テーピングのテープ切らしちゃったんだった…。」

最後に出てきた幸村にドリンクとタオルを手渡すと、備品について尋ねられた。買い出しについても、私の仕事だ。

「俺、丁度今日の帰りにスポーツ用品店へ行こうと思ってたから、ついでに買ってくるよ。」
「幸村くん、私もグリップテープを見に行こうと思っていたので、お供しますよ。」
「俺も予備の靴ひもを買いに行こうと思っていたところだ。」
「んーなんだかんだでこの時期だし、みんな必要なものあるんじゃね?せっかくだから全員で行こうぜ!もちろんジャッカルのおごりで!」
「俺かよ!」
「乗ったナリ。」
「っておい、仁王!」
「あはははっ!」

ブン他の提案で買い出しは全員で行くことになった。会計は私だから、もちろんついて行くけどね。





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