「せーの!」



ぱんぱんぱーん!




……へっ?



「「「「「「「「「ありがとう、侑紀!」」」」」」」」」


先輩!と一人だけ叫んだもじゃもじゃくんはやっぱり後輩のようで…ってそうじゃない。何が起きた?…ジャッカルが何か叫んだと思ったら、幸村じゃなくて今度は私にクラッカーが向けられた。それと同時に祝賀会の文字の下の紙で隠されてあった部分をジャッカルが勢いよくめくると、そこに書かれてたのは『松山侑紀マネージャー就任祝賀会』とこれまた達筆な字で書かれた文字。え、わたしの、なまえ…?


「フフ、いつまでぽかんとしているんだい?」
「えっ、待って!だって今日は幸村の復帰祝いのはずじゃ…!」
「今日の主役は2人ということですよ。」


侑紀さん、引き受けてくださってありがとうございます、と微笑むヒロシ。嘘、まさか、そんな、私まで…っ!


「ま、お前は自分の分まで時間稼ぎしてたってわけ!」


ぽーんとブン太に勢いよくどつかれた。いったー!もう、私が女ってこと絶対忘れてるわこいつ!でもどうしよう、すごくすごく嬉しい。みんなが私を必要としてくれるって思っていいんだよね?うん、そうだ。せっかくやるんだから中途半端なやる気なんかじゃだめだ。私にできる、全力のことをやっていかなきゃ。そして、これから少しずつでも、みんなの期待に応えていかないと。


「侑紀とは初対面だな。俺は柳蓮二だ。これからよろしく頼む。」


さっきブン太と仁王に制止をかけた男の子が私の前に現れて握手を求めてきた。よろしく、と軽く手を握り返す。やなぎ、れんじくん…ああ、わかった!


「柳くんって、もしかしてあの生徒会の柳くん?」
「ああ、そうだ。それと、俺のことは蓮二でいい。」
「わかった。蓮二、ね。」


やっぱり、どこかで見たことあるなと思ったのは生徒会だからか。生徒議会など生徒会が前に立つことは多いから、自然と覚えちゃうんだよね。


「お、なら俺のことはまーくんでいいぜよ侑紀。」
「ぜえええええったい、い、や、だ!」
「はいはい仁王先輩は少し黙っててくださいよ!侑紀先輩!俺、二年エースの切原赤也ッス!」


わざわざ仁王を私から引き離して、自己紹介をしてくれた切原くん。ありがとうとても助かる!本当にかわいい後輩だなあ。赤也って呼んでください!だって、かわいいどうしようもなくかわいい。よしよしと頭をくしゃくしゃしてやれば子ども扱いしないでくださいって拗ねた。やばいかわいすぎる。


「さーてそろそろ食っていいよな?俺腹減って死にそー。」
「フフ、じゃあ俺もいただこうかな。」


ブン太がさっそく色気のないことを呟きだしたけど、実は私もそろそろお腹に何か入れたい。だって机の上にはたくさんのお菓子、お菓子、お菓子!目の前にこんなにお菓子があったら誰だって手伸ばしたくなるもの…。いや、私とブン太くらいなのかな。いやでも幸村も食べるって言ってるしいいよね。ってうわああれポッキー新作じゃんか!ずっと狙ってたやつだ、食べたい…。


「…あれ?これ駅前のケーキ屋の…。」


たくさんのお菓子に目を配らせていると、見慣れた白に花柄のケーキ箱が置いてあるのに気が付いた。ここ、おいしいんだけどちょーっと高いんだよね。いつも帰り道ショーウィンドウを睨み付けて帰るもの。


「ジャッカル君が買ってきてくださったのですよ。侑紀さん、お召し上がりにますか?」
「うそすごいじゃんジャッカル!太っ腹〜!!」
「せっかくの祝い事だからな。侑紀、幸村、好きなの選んでいいぜ。」


きれいな形に惹かれてショートケーキを選ぶと、みんな次々ケーキを選んでいって、気が付けばわいわいと部室は賑わっていた。なんかここ、本当に居心地がいいなあ。悪ふざけして盛り上がってるやつもいれば、それにきちんと制止をかけれる人もいて、でもそれでもみんなでわいわい楽しめる。みんなそれぞれバラバラなのに、仲良くて、団結力があって、まるで家族みたいだ。好き勝手してても、ここには帰る場所がそれぞれにちゃんとある。もちろん、長く時間を空けた幸村にも。今日入れてもらったばかりの、私にも。立海テニス部、ここが私の新しい居場所になるのかな。そのうちまた、テニス部ファンの女の子達にわーわー言われちゃうかな。


ううん。でも、それでもいい。だって私は、ここが、いいもの。




淡くゆるやかに滲む魔法




ここが、私の居場所。







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