山B曰く私のせいで長くなった終礼が終わり(半分はそうかもしれないけど、半分は違うと思うの!)、みんなバラバラと席を立つ。部活に行く者、掃除に向かう者、そそくさと帰る者、立ち話に花を咲かす者。そして隣の彼もまた然り。鞄を持って立ち上がると私の腕をぐいと掴んだ。・・・・・・え?ちょなんて強引な。


「さあ、行こうか侑紀。」


きゃあああと湧き上がる歓声。まってください、こっちはぎゃあああああですから。だからそういう目立つことやめろっての!すっごい嫌な顔してぶんと腕を振り払ってやると、案の定周りがしんと静まった。


「だ、か、ら、私がいつマネージャーやりますって言った?おかしくない?この状況!」


睨みを効かせてやれば、怯むのは私たちに興味の眼差しを向けていた女の子たちのみ。けどいいの、それで。作戦は成功。


「松山さん酷い!幸村くんは退院したばっかなのに!」
「そうだよ、侑紀ちゃんだってテニス部がどれだけ大変かくらい知ってるじゃんか!」
「幸村くん、マネージャーなら私引き受けるよ。」
「あ、ずるい私もやりたい!ずっとやりたかったんだから〜!」
「何言ってんの私は1年の時からずっとやりたかったんだからね!」


おっ!やった、やった!どんどんもつれてややこしくなればいいんだ。いやあこんなに上手くいくとは思ってなかったなあ!もっともっともめちゃえっ。わーわーきゃーきゃー盛り上がる女の子たちを、私はただただ傍観していた。そりゃ、天下のテニス部がマネージャーを募集中、なんて聞いたら黙ってる女の子の方が少ないだろう。この期を逃すな!だよね、みんな目が必死すぎる。


「こーなったら幸村くんに決めてもらお!幸村くん、この中から松山さんの代わりにマネやる子選んでよ!」


1人の子が妥協案を提出したらしく、みんなそれに賛同する形をとったようだ。しかし、思ってた以上に楽しいなこれ。あ、でも幸村が本当に代わりのマネージャー選んじゃったらそれはそれで困るけど…。どうするかな幸村、なんてちょっと不安が胸をよぎる。


「悪いね。マネージャーは侑紀にやってもらうから大丈夫だよ。」


思わぬ即答だった。相変わらずの営業スマイルを崩さず返答する幸村。どうしよう、なんでかな。今、ちょっとだけ、嬉しいや。胸の奥がちょっと締め付けられるような感じ。えー、でもたくさん居てもいいんじゃない、絶対私の方がちゃんと仕事するよという女の子たちの必死のアピールが飛び交う中、私は振り払った腕を再び幸村に掴まれ、強引に教室から連れ出された。





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テーマ「人外ファンタジー」
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