はあーまじかよ、と盛大に目の前でため息をつかれた。ため息つきたいのはこっちなんだけど。 「『黒髪ストレートに何もついてない鞄を見たら松山だと思え!』ってお前知らねーの?」 「??初めて聞いたんだけど。」 なにその芸能人みたいな扱い。しかも私だし。でっち上げもいい加減にしなさいよ、この豚。 「はあ、鈍感なんだか面倒くさいんだか。」 「あんたに言われたくないんだけど。」 「お前、相当鈍いんだな、知らなかったぜぃ。」 鈍い?どこが。私は女の世界で生きてるのに。鈍かったらやってけないってば。 「はあ、もういいわ。そんなでっち上げもう聞きたくない。」 「何言ってんだよ、でっち上げてなんかねーよ!さっきも見ただろぃ。あの子たち。」 「じゃあ、聞かせてもらう!なんで私が目立つのよ、理由は?」 そう言った瞬間、うっ・・・と固まるブン太。ほら、何も言えないんじゃない。はめられるところだった。危ない危ない。 「お前、それ本当に俺に言わせる気・・・?」 「ふふ、やっぱり言えないんじゃない。悔しかったら言ってみなさいよ。」 「だーかーら・・・っ!」 なんだか顔を赤らめて目をそらすブン太。な、何、そんな恥ずかしいことで有名なの私?かなり嫌なんだけど。 「・・・お前が、その・・・」 「うん。」 「・・・・・・うあー!うぜえ!自分で気づけよ!この鈍感女!」 「なによ!分らないから聞いてるんじゃない!」 じたばたし始めたブン太にそう告げればぴくりとブン太の顔が引きつった。何よ、とぐいと顔を近づけてやれば、ブン太はだん!と足で廊下を踏みつけそのまま勢いに任せて口を開く。 「お前がっ!美人だからだよぃ!!!」 最後を叩きつけるように言い切ったブン太は、そのままふんっと思いっきりそっぽを向いた。って・・・え?ちょっと待って、 「・・・は?」 「あーっ!もーぜってー言わねぇ・・・。」 ブン太の言葉に一瞬目の前が真っ白になった。 呼吸する未来が眩しくて遠ざけた ・・・私が、美人? |