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朝、階段でずっこけた…ちゃうわ、倒れたんやね、あれは。寝起きの頭で二階から一階のダイニングへ行くために階段を降りてるときだった。急に足がくにゃんとまがってそのまま階段を踏み外し、ずだんずだんと鈍い音を響かせながら一気に一階へ。我ながら派手にやってしもたなあと思う。



でも、階段から足を踏み外したのはおそらく寝ぼけてたからじゃなくて熱を出してふらついていたから、と教えてくれたのは目が覚めて遅めの朝食と薬を運んできた母。私はあのまま気を失って、気づいたらベッドの中にいた。熱を出した理由はおそらく、昨日の帰り道のどしゃぶり。…の中傘をささずにびっしゃびしゃやーなんて叫びながらるんるん歩いてた私のせいだと思う。しかたないやろ、傘忘れてしもうたん。



そういえば、熱を出したのなんて高校に入学して初めてだ。それまでは、なんとかは風邪をひかないなんて迷信でよくからかわれたけど…もうこれで反論できる。よし。いや、ようないわ。理由があまりにもアホやん。しもたわ。




そんな私は、今ベッドの中な訳で。学校のみなさんは授業中な訳で。同じ時間に違う空間にいることに、なんだか違和感を感じる。まあしゃあないけど。やっぱり熱はつらくて一時的に意識を取り戻しては、手放すの繰り返し。ちょっと酔ってきた。そしてまた意識を手放す。重たい瞼を閉じる。






…あ、蔵や。夢やな、これ…。




「大丈夫なん、名前?」



ああ、蔵ノ介ってやっぱり美形やな…。最近なんとも思うてへんかったけど、改めて見ると綺麗な顔やわ。



「熱だしたって聞いて、めっちゃ驚いたんやで。」



そう言って夢の中の蔵ノ介は私の額に触れる。熱を持った額にはその手ですら冷たく気持ちよく感じる…ってそれ、おかしいんちゃう!




「あっつー!!なんや、これ!ほんまに大丈夫なんか」



蔵ノ介の手が跳ねて私の額から遠ざかった。もしかして、夢ちゃうん、これ?夢ちゃうの…?




「く、蔵ノ介…?」




「おー、ようやくしゃべりよったなあ」




驚き半分で名前を呼んでみると、目の前の蔵ノ介はいたずらっぽく笑ってみせた。本当に夢じゃなかった!神様、ほんまおおきに…!




「い、いつからいたん?」



「ん?今きたところやけど」




ぐいと腕に力を込め上半身を起こそうとすると、蔵も私の背中に手を添えて手伝ってくれた。細かい気配りが蔵ノ介らしい。


「そうなんや…。わざわざ、おおきに。」



「アホ。自分が昨日、俺に送られとったらこんなんにならへんかったんやで。」


コツンと軽く私の頭を蔵ノ介が小突く。別に痛くないけど押さえて軽く睨む。


「なに言うてん!蔵ノ介やって傘持ってへんかったやないか!」



「せやから俺の学ラン羽織うてけ言うたやろ!」



「そないなことしたら、今頃蔵が熱だしてたんやで!」



わかってへん。自分テニス部の部長やないか。熱だして部活休んで体力落として…そんなんなってええわけないやろ。1日でも練習怠るのいやがるくせに、こういうことになると矛盾するんやから、意味分からんわ。



「名前、俺んこと心配してくれてたんやな」

「あたりまえやろ!部活もあるんやし、身わきまえろ!」


「ははっ、名前に心配されるとは思うてへんかったわ」

「……」


「…ありがとな、心配してくれて。でもな、俺やってお前のこと心配なんや。同じように。せやから、次はちゃんと、俺に守らせてな、名前。」



そうやって爽やかに笑う蔵。ああ、もう



「アホ。言われへんでもこき使こうたるから、覚悟しいや。」



「おー恐いわあ。名前サン。そないに眉間にシワばっかよせとると、将来こまるで?」



「うっさいわ、言われへんでもわかっとりますーだ。」



蔵ノ介だけには、かないそうもない。













(解熱作用のあるもんいっぱい持ってきたんやで)
(うわ、それちょう苦そうやん……)
(良薬口に苦し、や)
(う……つらいわあ)
(早く熱下げんともっとつらいままやで?)
(わたし、苦いもん、すき、大丈夫、大丈夫や!)
(……自己暗示効くとええな)



The end !

(20101005)


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