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平日よりもうんと早起きして出かける。このごろ朝はもう肌寒いから、お気に入りのカーディガンに身を包むと、やんわり伝わる寒さが心地よかった。空気は冷たくどこか濡れてて、まるで地球上の生き物みんな呼吸を忘れたんじゃないかってくらい澄み渡っていてきれい。



せっかくだから、お気に入りのカフェの新しいマキアートでも飲みに行こうかな。まだ人の少ない時間だから、行くだけでわくわく。冬みたいなひんやりとした気温に濡れた空気をまとって進む。あまりにもアンバランスな気候でまるで異世界にいるかのよう。





お店つくとまだ1人もお客さんはいなかった。やっぱり、この時間にきて正解。新作のマキアートを注文して、階段を上がる。二階の窓際のテーブルが私の特等席。

だから階段を登りきって真っ先に顔を向けたんだ。




「ぁ…れ…幸村くん?」




私の特等席にはすでに先客がいて、しかもその人は私のお友達で、クラス一、いや学校一の美人といわれるほどの男の子だった。幸村くんは窓際の席に座って、よく似合う紺色のジャケットを羽織い、本を読んでいる。まるで絵に描いたかのような光景は、今日の霧がかった空気の中に一緒になって溶けてしまいそう。




「あれ、名字さんじゃないか。」



私に気づいた幸村くんは一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐに微笑んでくれた。なんだか嬉しくなる。クラスでも、幸村くんと話していると、思うことが似ていて楽しい。そんなとき幸村くんは決まって今みたいな顔で微笑んでくれる。


そこ、私の特等席なんだ、と伝えると、なら一緒に座ろうか、と返してくれた。お気に入りの席で幸村君と相席だなんて、早起きしてよかった。




「ここ、よく来るの?」


幸村くんは、席についた私の顔を覗きこんだ。本はいつのまにか閉じられていて、少し悪かったかなと思ったけれど、幸村くんが私と話しをしようとしてくれてると思うと、とても嬉しい。


「うん、でも朝来たのは今日がはじめてかな。」


「そう、俺は朝に、たまにくるよ。この静かでゆっくりとした空間が好きなんだ。」


「ふふっ、私も。気に入っちゃった。また来ようかな。」




そう言って笑って返せば、店員さんが、お待たせしました、と頼んだマキアートを運んできてくれた。マキアートの熱がその場をほんのり温める。冷えた体にはやくその熱を取り込みたくて、手が伸びた。優しい味と熱が口いっぱいに広がって体に伝わってく。





「おいでよ、待ってる」





優しい笑顔でつつまれた、世界は呼吸を始めたよう。

体全体に広がる心地よい温かさは、きっとコーヒーだけのせいじゃない。







(日曜日の朝は、君に会いに行こう)





(20101024)


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テーマ「人外ファンタジー」
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