「幸村部長…」

誰も居なくなった部室で一人呟いた。最後に見たあの微笑みが頭から消えてくれない。






act.8

(どこまでも跳んでいける気がした)









家に帰っても思い出すのは幸村部長のことばかり。あー私なにやってんだろ、どうしてこんなにも部長のことを…うにゃうにゃ。もう宿題も予習もどうでもいいや。すべてほっぽり出して布団へダイブ。でも頭の上から掛布団を被っても浮かんでくるのは幸村部長のことばかりで。…どきどき、とはちょっと違う。もっと、知りたい。そう、私は幸村部長のことがもっと知りたいんだ。傷口に当てられたガーゼを見て、夕方の出来事をぼんやり思い出す。あのとき、部長はどんな顔してた?どんな思いで、このガーゼを当ててくれたんだろう。うう、体中が縮こまるような、不思議な感覚。目も、口も、手のひらもぎゅっと閉じて、私はしばらく布団にもぐっていた。



ジリリリ、目覚ましがけたましく鳴り響く。ああ、朝か。不確かな意識の中、ガシャンと布団から腕を伸ばしていつものようにアラームを止めるとかさぶたが覆った傷口が目に入った。昨日散々迷った挙句、お風呂に入る前にガーゼは外したのだ。そのガーゼをつけたまま幸村部長に会うのははばかられたし、つけていなくちゃいけない理由もないけど、それでも外すのをためらって、最後まで迷って悩んだ。答えは決まっていたはずなのに。はあ、私、やっぱりどうかしてる。なんでこんなに幸村部長のこと考えてるんだろ。あ、そういえば結局宿題も予習もやってないや。昨日は、うん、…幸村部長のことばかり考えてた。頭がいっぱいだった。ああ、うう…。もう、宿題も、予習も、どうでもいい。早く制服に着替えなきゃ。




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