「えっと・・・テニスコートは、こっちだったよね」













act.2

歯車はりだす















迷いながらも、何とかたどり着いたテニスコート。この学校に通い始めて、もう半年経つが、あまりの敷地の広さにいまだ何がどこにあるかはっきりしない時がある。スポーツ大国である立海は、一つ一つの部活に与えられた敷地が多いため移動にも一苦労だ。


「ふぅ、何とか辿り着いたあ・・・。」


とりあえず門の方だという認識はあったのでひたすら足を進めた。野球部の使っているグラウンドを抜けると、そこには赤土のテニスコート。やっと見つけた、安堵感からほっとため息をひとつついてコートフェンスに手をかける。この冷たい感覚も、実に久しぶりだ。


「あ、ゲーム始まった。」


パコンパコンと気持ちのよい音が聞こえてきた。見ると奥のコートで2人、ゲームを始めたようだ。サーブから始まって、ボールのスピード、回転、コントロール・・・どれをとってもレベルが高い。すごい、あんなに打てたら楽しいだろうな。1人は長身で、目が糸のように細いが、相手打ってくる球の次のコースがわかっているかのごとくどんな難しい球でも先回りして打ち返す。かというもう1人は、帽子を被っており、並外れたテクニックで打ち返された球を難なく返していく。


「すごいな・・・あの2人、どっちも強い。」


赤也から、全国制覇!!なんて話には聞いていた。けど実際に見たことがなかったし、中学生になって男子と女子との力差の具合もよく分らなかったから想像もできなかったけど、今見て分った。やっぱりすごい。とてつもなく強い。それに、あの帽子の人の威圧にも似た雰囲気を背負いボールを打ち返す姿には、並みの相手では、コートに立つことすら恐縮するだろう。あ・・・もしかしたら、あの帽子を被った人が赤也の言ってた



「・・・幸村部長?」




「どうしたの?」
「ひゃあ!!」



口から滑り落ちた独り言。背後に人なんていないと思って気を抜いていたから、恥ずかしさのあまり慌ててわれに返り振り返る。そこにいたのは美しい少年。私からしたら先輩だけど。にしても、びっくりした・・・。


「ああ、ごめんね。驚かせちゃったみたいだね。」
「い、いえ・・・。」


男の人だけど、すごく柔らかい優しい声。女の子でも顔負けする容姿。この人もテニス部の人だよね。



「なにか用だった?」
「あ・・・、はい。1年の切原くんに用があるんですけど、部活が終わるまでここで待っていてもいいですか?」



そう、赤也に謝らないと。ちょっと早く来すぎちゃったな、そういえば部活が終わるのは6時くらいらしいけどまだ時計はようやく5時を指したところだ。まあテニスを見ていたら幾らでも時間はつぶせるけれど、王者立海と呼ばれるくらいだ、集中力が切れるなんて理由で見学を許してもらえないかも。じゃああそこの階段に座って待っていようかな、なんて考えていると先輩はああ、と口を開いた。


「赤也か。それなら今・・・あ、きたきた。おーい、赤也!」




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