「いやー、マジ助かった。サンキューな!」
「はは、よかったね、寿命が延びて」



終礼が終わると赤也が私の机まで駆けてきた。尻尾がはえていたらぶんぶん振ってそうな感じで。英語の授業中、案の定先生に当てられた赤也は、私のノートを写したおかげで、なんとかお目玉を食らわずにすんだ。先生も、毎回毎回こんな生徒相手に大変だよな、なんてちょっと思ってしまう。


「じゃあ俺、そろそろ部活行くから…、あ、そいえば僚なんでテニス部はいんねーの?女子にもテニス部あるだろ?入ればいいじゃん!」

と立ち上がり私の方を振り向く。目にお星様いっぱい輝かせて。


テニス…そう、私と赤也は同じテニススクールに通ってた。途中私が引っ越してからは、別々のところに通ってたけど、大会なんかで出会ってはよくお互いいろんな話をしていた。



だけど、私は…





そう、私は…






「…私は、もう、…テニスはやめたから…」




「…はぁ?なんでだよ!」


驚いたのか、少々声が荒れていた。ごめんね、赤也。


「やめたの!私はもうテニスはしない。」



赤也に顔を見られたくなくて必死に俯いた。ああ、私、いまどんな顔してるんだろ・・・。
堪えるのに必死だ。



「い、意味わかんねー!なんでだよ?あんなにテニスのこと好きだったくせに。なにやめたなんてこと、そんな簡単にいってんだよ!?なんか言えよ!僚!」


「うるさいなあ!赤也には関係ないでしょ!?」




「…」



「…!」





あ、



みんながこっち見てる




自分でも肩で息をしてることがわかりそうとう大声を上げて赤也に怒鳴ったのだと理解した。





「…ご、ごめん。」





───私、サイッテーだ…。




「俺こそ、その…わ、悪かったな。それじゃあ俺、部活あっから…」




「…うん。」






…みんながこっちをみてざわざわ言ってる。やれ切原がまた何かやらかしたのかだの、やれ榎田ってあんなキャラだっけだのと…。赤也には悪いがとばっちりを食らわせてしまった。ガラガラと教室の引き戸を開けて彼は部活に向かった。明日も気まずいだろうしあとでちゃんと謝りにいかなきゃ。







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