「あの、恐らく勘違いされてると思うんですけど、私と赤也はただの幼なじみで…。」



正門から離れている南校舎裏は、この時間だとほとんど人は通らない。部活だって運動部は皆正門付近に各部のコートがあるし、体育館や文化部の部室は西校舎に固まっている。これを絶体絶命と人は呼ぶのだ。まさか自分がこんな目にあうなんて。



「じゃあ、どうしてマネージャーしてるの!?幼なじみだからなんなのよ、理由になってない!どうせ汚い手でも使ったんじゃない?」


冷静を取り戻したといっても、やはりこの話に怒りに我を忘れかけている先輩は、私が何を言っても火に油。ただ私のことが気にくわないらしい。




「だから、違いますってば!」



反論した瞬間、ガシッと胸ぐらを掴まれた。一瞬何が起きたのかわからなかったけれど、ぐいと持ち上げられた上半身に浮いた片足で、なんとか自分の置かれた状況を理解。これは、ああ、もうだめだ。



「赤也くんに近づかないで!」



一段と声のトーンを落として睨まれる。赤也に近づかないだなんて、マネージャーという立場上、幼なじみという立場上、そんなの無理だよ…。首を縦に振っておけばよかったのに、嘘をつけない性格はやっぱり要領よくいかないな、先輩は遂にしびれを切らしたようで、顔を歪ませた。さっき赤也を応援していた時みたいなキラキラしたオーラは微塵もなくなって、まるで獣みたいに醜い。



「言うこときけないの!?」



どうしよう、何か言わなきゃ…!そう思っても、恐怖で固まって手も、足も動かせない。まるで自分の体が自分の物じゃないみたいに。



「そう…。せっかく忠告してあげたのに残念。言ってもわからないんだったら、体でわかってもらうしかないね!」



そう言うと、先輩は思いっきり高く手を振り上げた。




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