取締人の場合


霧崎 遊馬……乱射魔
細 無月……サポーター


「久々に"地元"から連絡があったと思ったらこんな事かよ。
昼間っから強盗たァ大層かつ無謀な事しやがって。警察もいよいよナメられてきてんのかね」

 遊馬は地面にしゃがみ込みひとり言の様に呟く。暗い茶髪の大人しそうな青年の手元では先程犯人二人から没収した自動式拳銃を分解していた。この青年が数分前に銃を乱射していたと言えば、何人がそれを信じるのだろうか。彼は今も無言で銃を解体し続けている。パズルを壊すようにぽろぽろと、パーツは無機質な音を立て薄茶色の小さい紙袋の中へと落ちていった。
 先程の犯人と言うのは今頃警察で取り調べでも受けているのだろう。
 遊馬の正面に立つ無月は乱れたスーツの襟を直しながら彼に話しかけた。

「今はセキュリティが優れてるから夜に銀行強盗とかも無理じゃない?」
「ああ、そうか」

 納得し、遊馬はまた拳銃を解体する作業に戻る。

「この後、まだやる事あんの?」

 彼の奇行に呆れながら、無月は次の予定を尋ねた。分解し終わった銃の入る紙袋の口を折り、遊馬は言う。

「帝を追う」
「あの殺人鬼を?」
「この町に入ったんだとよ。多分しばらくは家に帰れねェから、明無には連絡入れとけ」
「はいはい。あと一々拳銃バラす意味あんの?」
「別に?」
「ああそう」

 会話を済ませると遊馬はスーツの胸ポケットに仕舞ってあったサングラスをかけ車へと歩き出す。その際、トリガーハッピーと恐れられる男は誰にも聞こえない様な声でボソリと呟いた。

「紀喜の奴、ちゃんとドラマ録画してんだろーな」


 


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