02 ちっちっち | ナノ

ちっちっち



「あ、おいこら! 待て!」

 お風呂上がり。シャンプーやボディーソープの匂いをあちらこちらに漂わせながら、濡れた金髪のままドタドタと家の中を走り回るのは俺の弟分、いや、友達の黄瀬涼太。俺も同じシャンプーやぼティーソープを使っている筈なのに、どうしてかヤツからは違う匂いがするかのようだ。
 ヤツは自分の身体を拭くのもそこそこに、服をさっさと来て家の中を走り回っている。遊びたい盛りの幼稚園年長さんをナメちゃいけねぇと俺が悟りを開いているウチにも涼太が走り回るものだから、それを追いかけ、俺も走る。自然と追いかけっこ状態だ。まるで童心に返った気で、190cm越えの大男が家中を走り回るものだから、寝室から寝起き頭でぽやぽやと出てきた親父に渋い顔をされた(親父は今日臨時休暇だったようだ)。

「きゃはははっ、おにぃ……っうわ!?」

 キャーっと楽しそうにリビングに入っていった涼太が、驚きの声を上げたのはそれから少し経ってからである。
 俺は何事かと急いでリビングへ。怪我でもしたか?
 しかし、心配は無用だったようで、そこでは見慣れた薄桃の髪が、涼太を抱きしめている所だった。

「おい、さつきー。まーた突然人の家に上がりこみやがったな?」

 むにゅ、むにゅっとすくすく育った豊満な胸に押しつぶされて、苦しそうにバタバタと暴れる涼太を見て羨ましい、などと思ったことは内緒である。
 良いなーおっぱい。あー、おっぱい。

「ちょっとくらい良いじゃない! 私だってきーちゃんと遊びたいわよ! それにぃ、今日はおばさんが一緒に御飯食べようって連絡くれたんですぅー!」

 ふと、抱きしめていた涼太を開放してこちらに顔を向けてきたのは、幼馴染の桃井さつき。
 ぷくぅ、という効果音でもつきそうなくらいに頬を膨らませて居るものだから、お前も25歳だろ、二十代も折り返しだぞと歳を考えろと促すようツッコんでやりたくなる(けれど、それを言ったら俺が怒涛の勢いで潰される事を理解しているので俺は押し黙った)。
 涼太を抱きしめていた胸元のくまちゃんは、可愛そうなほど顔が伸びていて、流石さつき、と一人感心した。

「遊びてぇなら明日でも遊べるだろーがブス! それに何余計なことしてくれてんだババア!」
「別にいつだっていいでしょ! せっかくきーちゃんが観たがってた“たま○っち”のDVD持ってきたのに! ブスとは何よ、このガングロクロスケおっぱい星人!」
「コラ、大輝! ババアとはなによ、ババアとは! アンタは御飯抜きにされたいの!?」

 女、怖い。1言うと10で返ってくるその反撃力に俺のライフはもうゼロよ。
 さつきとばば――……御袋がタッグを組めば俺に勝ち目はない。
 俺は大人しく引き下がって、唇を尖らせた。

「え、“たま○っち”っスか!?」

 そこにきて漸く今までぜーぜーと苦しそうにしていた涼太が、表情をぱっと明るくさせてさつきの周りをぴょこぴょこと跳ね回る。あー、すげぇ嬉しそう。
 最近よく聞く“たま○っち”とは、今涼太の通う幼稚園で絶大な人気を誇っているアニメで、涼太も観たいみたいと騒いでいたものだ。
 涼太のキラキラ輝く瞳を見たさつきも嬉しそうに笑うもんだから、俺はツッコミを入れるのすら忘れて二人を見ていた。

「そうよーっ、大ちゃんなんて放っておいて私と一緒に観ましょー!」

 表情を緩ませて冗談(だと思うけれど)を言うさつきを横目で見ながら、今日の晩飯何ですかお母様と、御袋の斜めに傾いた機嫌をとるよう引き攣った笑みを浮かべていると、その幼いながらもはっきりした声が俺の耳に吸収されるように届いた。

「駄目っスよ〜! おねえちゃも、おにいちゃもお友達だから、一緒に観るっス〜!」

 天使、マジ天使。何この天使。
 俺は思わずだらしなく緩みきってしまった頬を手で隠しながら、もう片方の手で涼太の頭を撫でてやった。
 それはさつきも同じだったようで、更に興奮した様子でキャーキャーと騒いでいる。

「んじゃ、晩飯前に観ちまおうぜ?」

 まだ、御袋がご飯を作っているのは一目瞭然である為、俺は涼太を片腕に抱き上げてソファーへと移動した。
 幼い頃からこの家に入り浸り、家の使い勝手をよく知るさつきは、何を言わずともその行動が何を表すかなどわかっていたようで、俺たちの目の前にあるテレビを点け、その下にあるDVDデッキに“たま○っち”のDVDをいれた。







「面白かったっス〜!」

 すっかりDVDを観てご満悦な涼太。黄やら緑やら橙のちみっちゃい妖精が織り成す破天荒な物語は一般的に大人と分類される俺たちにでも十分楽しむことが出来た(もしかしたらそれは横で楽しそうに合いの手を入れていた涼太のおかげかもしれないが)。
 そんな涼太は、聞いて聞いて、というように俺の足に乗っては腹に頭をすり寄せて来た。もう、何度でも言おう。涼太マジ天使。

「あのねー、たま○っちの中ではみんな〜っちってつくじゃないスか〜! だから、俺もおにいちゃの事“あおみねっち”って呼ぶっスー!」

 そう言って無邪気に笑う涼太。等の本人である俺はコイツが可愛すぎて放心状態。大丈夫か、俺。鼻血、出てたりしねぇ?

「おねえちゃは桃っちって呼ぶっスね〜!」

 さつきはさつきで嬉しそうに“ありがとう、きーちゃん!”なんて騒いで、また涼太を抱きしめている。涼太は涼太で苦しそうだ。デジャヴュ。

「まあ、悪くねーかもな」

 御袋が、“ご飯よー”と駆けてくる足音を聞きながら、そんな事を思ったとある日の晩







「ちっちっち」
(( 青峰っちー!! ))






俺得ドカーン(*°∀°)=3
原作者様である薬剤ラムネ様とは別の「青峰っち」に至るまでのお話でした。
パスタっちも素敵です// というか、むしろパスタっちの方が好きです←

そういえば、最近私が小さい頃に使っていた“た○ごっち”が発見されました(笑)
もう電池を入れても動きませんでしたが、いやぁ、懐かしかったです(^▽^)




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