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*「空回り恋もどき」より青髪武士様と金髪遊女様のもしものお話。
*本編とは一切関係ありません




「ねぇ、青峰っち」

 初夏の夜風がふわりと頬を撫で、通り過ぎていく
 二人、出会ったあの頃と変わらず夜闇に負けじと輝く月明かりの元、格子越しに二人で話す
 いつの日にか青峰にとっても煌にとっても日課になったその行為は今夜も夏の虫の鳴き声を背景に幕を開けた
 耳をくすぐるその声音が愛おしい。そんなことを思いながら彼女の声に耳を傾ける俺は「ん?」となんとも簡潔な言葉で相手の声に応答する

「もし、もしもっスよ」
――もし私が、ここを抜け出して自由の身になるって言ったら。どうするっスか?

 どこか遠くを見つめながらそう話す煌の表情はいつも見るふにゃふにゃとしたものではないということは判別できる。どうしてか、中途半端に答えてはいけない気がして、俺は格子越しにひっそりと夜闇に隠れるようにして開かれた金の双眸を見つめた

「一緒にどこか遠くに。 それ以外にねぇだろ」

 自慢ではないが、彼女に出会ってから今まで一度たりとも彼女を抱いたことはない。それどころか、格子にくくられたその形より下――要は彼女の全体像すら見たことがない。ただ知っているのは格子からまるで握って欲しい、と言わんばかりに少し出された手の僅かな温もりとその涼やかな声音。そして、彼女の人を寄せ付ける優しい人柄
 たったそれだけでも、俺には十分すぎるくらいだった。だから不思議と彼女から“もしも”を聞かれてもそう答えるのは決まっていたようなものだ
 俺は、この格子越しの女に恋してる――
 俺の答えを聞いて、格子の奥にいる彼女が泣きそうになりながら嬉しそうに笑った顔を、俺は一生忘れることはできないだろう







 なんて、思っていたのが半年程前だったか
 今、俺の側にはあの頃の煌びやかな着物を纏い男に愛想を振りまく仕事をしていた彼女はもういない。あれからすぐに、彼女は人目を盗んで遊廓を後にした。俺と歩みを共にする為に――

「青峰っち!」

 嗚呼、この呼び名だけは変わらない。今はお前も青峰だろうが、なんて言ってみようものなら収拾がつかなくなりそうなのでやめておく
 そう。彼女――煌……いや、黄瀬涼基い青峰涼は俺と歩みを共にする為に遊廓から決死の覚悟で足抜けを試みた。必死に逃げた甲斐もあってか、もう追っ手が彼女を探すようなこともなく、長閑に二人、山奥でひっそりと暮らしていた
 誰に認められなくてもいい、ただ二人で幸せに暮らしていけたらそれで。と言う気持ちから彼女と夫婦の契も交わした。そうして彼女は晴れて俺の元へとやってきた訳だ

「大輝、だろ。 涼」

 昔――といってもつい半年程前の話ではあるが――に思いを馳せふと一人笑みを零す。彼女は俺の顔を見ながら照れたようにはにかみあの頃と変わりないその涼やかな声音で“大輝”と俺の名を呼んだ

「やっぱり、気恥ずかしいっスね……。 ほーら、お前の父様はこんなに恥ずかしいことを母様にさせる人なんですよー……」

 彼女は、まだ膨らみも見せないそのお腹を撫でながら優しく微笑んだ。そう、俺らは夫婦になっただけではなく、子どもも授かっていた。俺の子どもという確証はない。それでも、俺は彼女や子どもを愛し、慈しんでいこうと思う

「ねぇ、大輝。 私、今凄い幸せっス」
――こうやって、あんたの隣に立っていられることが

 まるで太陽のようなその笑みを称える彼女の口元に口付けて俺は笑う

「俺もだ、涼」




「 20000 HIT Thanks ! 」
(( 涼、幸せになろうな ))
(( はいっス! ))





というわけで[If]のお話でしたがいかがでしたでしょうか?
あくまでも[If]であり本編とは関係ありませんのでご了承ください

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