羽は見えなくとも
「おーにーいーちゃー!」
もうすっかり日も落ちた頃、仕事から帰ってきた俺に向かって黄色い頭をパサパサと踊らせながら元気よくトスッ、と全体重をかけ俺の足元に抱きついてきたのは、隣に住んでる黄瀬さん家の息子――黄瀬涼太。
両親が共働き、ついでに言うと年の離れた姉たちも部活やら仕事やらで、普段あまり家に居ないため、昔から近所付き合いの深い青峰家で預かっている、というか遊んでやっている帝光幼稚園の年長さん、5歳。
今日は両親共出張で、その姉たちも帰りが遅くなるらしく、俺の家に宿泊すると聞いていた。
俺より20も若いその坊主は、くるくると表情を変えるし、突然突拍子もないことをやらかす。その様子は見ていて飽きないし面白い。だからこそ俺が直々に、こうして面倒を見てやってる訳で。
かまってかまって、と足元でバタバタする涼太の頭を軽く撫で、抱き上げる。
キャ〜と黄色い声を上げ騒ぐ辺り可愛らしくてしょうがない。生憎俺には弟は愚か兄弟すら居ないが、実際に兄弟が居たらこんな感じなのだろうか。
「ただいま、リョータ」
「おにいちゃ、おかえり!」
ニコニコと嬉しそうに笑う涼太を見て思わずこちらも笑みが浮かぶ。
それが嬉しかったようで涼太はそれ以上にぱぁっと表情を明るくさせた。
「大輝ー、涼太君と一緒にお風呂、入っちゃいなさい!」
「わーったよ」
涼太を「たかいたかーい」と持ち上げていれば、奥から夕食の準備中である御袋からの声がかかる。
腹減ったんだけどなー、と一人ごちりながらも「リョータ、風呂入るか?」の問いかけに元気よく頷いた涼太を見てまあいいか、と二人で風呂に向かうことにした。
片手には風呂で浮かばせて遊ぶ、黄色いアヒルさん(因みに俺は小さい頃コイツ(アヒル)の目が怖くて大泣きしたと言う黒歴史があったりする)、もう片手には、両親に買ってもらったと言うお気に入りの水色シャンプーハット。
それらを持った涼太は「とちゅげきっス!」なんて言って風呂に飛び込んで行く。
「あ、こら! ちょっと待てって」
俺の静止も聞かずにきゃーっと楽しそうな声を上げながら浴室へ飛び込んで行く涼太。おいコラ、その内すっ転んで頭打つぞ。
そんな俺の心配も杞憂に終わったようで、涼太はいそいそと風呂の蓋を開け、慣れたようにそのお湯で一度身体を流すとジャプンっと音を立ててお湯に入った。
「おにいちゃ、早く、早くっ!」
ぷかぁ、と湯船に浮いた黄色いアヒルを見てはしゃぐ涼太に急かされ俺も浴室へ。シャワーを浴びて、涼太の待つ浴槽へ浸かれば俺一人分のお湯が溢れ、ザバーっと零れおちた。そんな些細なこと一つでも楽しそうにはしゃぐ涼太は聞いて聞いて、というように俺を見つめてきた。
「どうした、リョータ?」
俺に聞き返してもらって嬉しかったのか表情を明るくさせながら涼太は言った。
「あのね、あのね! 今日新しくおホモだちができたんス!」
「!?」
おいおい、今なんて言った? おホモだちって……言わなかったか? そっちの気に目覚めさせた覚えはねぇぞ! そんな俺の気持ちとは裏腹に楽しそうに話す涼太はこう続けた。
「黒子くんって言うんスけど、いい子なんスよ〜! すっごく影が薄くって、俺今まで気がつかなかったんスけど」
おい、いい子がおホモだちなのか!? てか若干5歳にしてホモってなんだよおい!
「おにいちゃ? どうしたの?」
心の中で葛藤を繰り返していた俺に気がついたのか、僅かに火照り始めたとろんとした表情で首を傾げる涼太。その瞳は蕩け切ったべっこうの様で、思わず食べてしまいたくなる。
「……リョータ、お友達じゃないのか?」
「? おホモダチだよ、って黒子くんに言われたっス」
すっごくニコニコしてたっスよ〜と笑う5歳児に、黒子と呼ばれたそのこどもが腹黒であることを俺は悟った。
それと同時に、涼太はその黒子と言う幼子にいじられたのだと思いながら、俺は思わずぶっと吹き出した。
「ははッ、リョータ! それは黒子って奴が面白がっただけだって。 いいか? お前と黒子って奴は“おともだち”」
「“おともだち?”」
「そうだ、おホモだちはちょっと違う意味になっちまうから」
まだなにか難しいものでも考えるようにうーん、とうなっていた涼太だが、ようやく納得が行ったのか「俺と黒子くんはおともだちっス!」と微笑んだ。
「じゃあ、俺とおにいちゃは? おともだち?」
とろんとした表情で首をかしげ問いかけてくる涼太に驚いたが、そのあと一言付け加えてやれば、その蕩け切った表情に大輪の花が咲く。
「勿論、おともだちだ」
「羽は見えなくとも」
(( こいつの笑顔マジ天使 ))
(( おにいちゃー、あちゅいから頭洗ってあがるっス! ))
(( はいはい、それじゃあシャンプーハット被れ! 洗ってやる ))
(( やったー!! ))
唐突ですが、お泊り編←
(´・ω・`)<ヨクワカラナイ作品二ナッテシマッタ
書いている途中で気づいたお風呂設定が意味をなしていない件についてはもう無視してください((
急いで最後のオマケにお風呂設定入れましたがマニアワナカッタ_(:3」∠)_
なんでも素直に受け入れてしまうきーちゃんに「おホモだち」といわせたかっただけの作品((
ごめんなさい、次からは真面目にやりますm(_ _ ;)m
次回はお泊り編の続きを書こうと思います、ショタ子作品難しいよー
でも書きたいことは山ほどあるので頑張ります!