恋人たちの朝 6868番 紅様 | ナノ

恋人たちの朝


*6868番キリリク 青黄で甘*


 ちゅんちゅんと小鳥の囀りがどこか遠く、意識の中で聞こえてきた。
 瞼越しに当たる明るい光は太陽の光だろうかと、確かめるべくゆっくりと重たい瞼を開き薄い生地のカーテンが引かれている窓辺を見つめた。
 すると、カーテンの隙間から除く鋭い光が目を攻撃、思わず目を瞑る。
 もう一度目をゆっくりと開き、きょろりと部屋を見渡せば此処が自分の部屋ではないことに初めて気がついた。

「あれ……?」

 思わずそう零した声もどこか掠れている気がする。
 益々訳が分からなくなってゴツゴツとした枕の上をゴロゴロと転がる。あれ、ゴツゴツ……?

「わっ、あ、ああああ、青峰っち……?」

 ゴロゴロと転がり、止まった視線の先には見慣れた浅黒い肌に青光する黒髪。
 薄く上下する胸板は服を纏っておらず、かろうじで下半身にはタオルケット。所為素っ裸。
 自分がゴツゴツする枕、と感じていたのはどうやら青峰っちの腕だったようだ。
 慌てて飛び起きた俺は何で、何で?と困惑する傍ら、自分もタオルケット一枚しか身に纏っていなかった事を知る。
 朝から丸出しだという事実に驚愕しつつ、青峰っちに見られなかっただけまだよかったと思う。
 ほっと息を付きつつ、青峰っちが起きてしまう前に取り敢えず着替えなければ!と焦りながらベッドを抜けようとしたその時であった。
 ――右手首と腰に強烈な痛みが走る。恐る恐る右手首を見れば浅黒いその手が自分の手首を思い切り掴み、先程まで瞑っていた目はキリッと開かれていた。
 まるで行くな、とでも言うようかのようなその眼差しに「嗚呼、今日も格好いい」なんて思ったらもう駄目なのだろう。
 腰の痛みには薄々勘付いていたが、痛いのが腰だけではないことから、きっとこの様子だと昨晩青峰っちと行為に及んだのだろうと推測。
 俺は意識が飛んでいたんだか、まったく覚えがないっスけど。
 ……なんて誰に言うつもりもないけれど。

「おはよっス、青峰っち」
「おう……、はよ」

 捕まれた右手首はそのままに半身を捻って左手で青峰っちの短髪を撫でてやれば気持ちよさげに目を細める彼に遭遇。
 ラッキー。寝起きの青峰っちはまだどこかぽやぽやとしていて幼い。俺は自分の格好も忘れて猫が人間にじゃれつくように青峰っちに抱きつく。普段はどこか獣を思わせる野生肉食型な彼に甘えるチャンスも滅多にないのだ。あっちからがっついてくるから、とか自慢じゃないっスよ、いや全然。

「青峰っち〜……昨日、激しすぎたんじゃないスか? おかげで腰が悲鳴あげてるっスよ!」

 なんて泣き言を言ってみるけれど実際はそんなことどうだって良い。むしろ青峰っちと繋がれたことを意味する痛みだから嬉しかったりもする。けれど彼は優しいから

「悪かったって。 お前、前にすっと歯止め効かねぇんだよ」

 最大のデレ言葉、というか俺が喜びを感じる言葉を口にして、俺の痛む腰をその浅黒い手で優しく撫でてくれる。それがどうしようもなく嬉しかったりするから毎回舞い上がってしまう。
 多分、今の顔は最高潮に赤いのではないだろうか。

「んー……、キスしてくれたら、許してあげなくもないっスよ?」

 一瞬だけ、キョトンとした表情を見せた青峰っちは次第にニヤニヤといつも通りの笑みを浮かべる。
 意地悪そうな笑みを浮かべて此方を見れくるけれど、俺だって恥ずかしくないっスもん! 平気っスよ!?
 “仕方ねぇな”というような仕草を見せてかはっと笑った青峰っち。
 すると俺の目の前が瞬時にふと暗くなり、唇に柔らかな感触。
 嗚呼、キスされてる。情事中の激しいキスとは違う、触れるだけの甘く蕩ける様なキスに自然に口角が上がってしまうのを抑えられない
 唇の淡い柔らかな熱はふとまたすぐに離れ、目の前はまたすぐに明るくなる。

「なあ、許してくれるよな?」

 確信めいたその表情に意地悪してやりたくもなるが、極上のキスをくれたからやめようと思う。後が怖いから、とかそんなわけじゃないっスよ!?
 俺は一拍あけてにこりと微笑み、青峰に強く抱きついては耳元で一言

「勿論っス!」





「恋人たちの朝」
(( あ゛ー、テメェのせいでまた元気になっちまった。 黄瀬ェ、相手してくれるよな? ))
(( ちょ、待って!? 俺今日午後から仕事なんスよ!! ))







6868番、リクいただきました!
青黄で甘(/ω\*)
私が甘いものを書くと甘くなくなってしまうのはどうしてでしょう?(笑)
取り敢えず、リクくださった紅様! ありがとうございました( ^ω^ )!



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