伝えたくて伝わらなくて、もどかしい気持ち。 どうしたら、伝えられる?どうしたら、振り向いてもらえる?
どうすれば、俺のことを見てくれる?
「財前?」
名を呼ばれて、はっとする。
そうや、今俺、★先輩に勉強教えてもらってたんや…
「財前がぼーっとするなんて珍しいな。どないしたん?」 「…なんもないですわ。それより、なんでここ連用形になるんです?」 「それ、さっき説明したやろ…ここはな……」
★先輩は、面倒臭そうな顔をしたが教えてくれた。 そんな★先輩を他所に俺は、ため息をついた。
ホンマ、俺らしくないわ…
「で、こうなるんや。分かったか?」 「あ…はい」 「今の間なんや…聞いてたか?」 「当たり前やないですか」
嘘です。全く聞いてません。 ★先輩は、ふわっと笑った。 その微笑みに思わず胸が高鳴る。
ホンマ、俺は★先輩に心底惚れとるんやな…
その思いに涙が出そうになった。
「そや、財前」 「?」 「財前って好きな人居んの?」
ドキッとした。 まさか、★先輩からそんな言葉が出てくるなんて思いもしなかった。
「クラスの女の子がな、騒いどったんや。『財前くん、好きな人居るんやって』って」
あぁ、そういうことか… ★先輩は、色沙汰に関しては超がつくほど鈍感。
そういや、前に告白された時に好きな人居るっていうてもたな…
「なぁなぁ。誰なん?」 「そら…秘密っすわ」 「えーっ」
ふて腐れ顔も可愛いな、と思ってしまった自分は可笑しいのだろうか。
「★先輩は、居らんのですか…?」
この言葉を発するだけで喉がカラカラになった。 ★先輩は、数回瞬きした後
「…居るよ」
照れたように、はにかむ先輩を見て胸が苦しくなった。 苦しくて苦しくて、吐き気がする程苦しくて。 体中の水分が涙腺に行く気がした。
「財前!?どないしてん!?」 「ぇ」
声にならない言葉が出た。 ★先輩があたふたしてる。
「何で泣いてん!?」
泣いてる…? 頬に手を当てると冷たい水。
ホンマに体中の水分、涙腺に行ったんやな…
涙が溢れんばかりに出てくる。
「財前?どないしたん?」 「なんもないですわ」
なんでもないことないやろ!?と★先輩が言うが俺は、知らない。 苦しい…その一言に尽きる。
「…そんなんされたら、俺期待すんで…」
顔を赤くして小さく言った言葉に俺の涙は、止まった。
「期待…?」 「だからっ…気付けアホ」
夕日のせいなのか分からないけど、赤くなっていく★先輩の顔が目に映る。
「それって…」 「…だから…そういうこと」
う〜と俯せる★先輩を他所に俺の顔はニヤける。 嬉しすぎて、机越しに★先輩を抱きしめた。
「財前!?」 「★先輩、好きです」
伝わる★先輩の体温が妙に心地良い。
「俺も…好きやで」
小さく囁いた言葉を聞き逃す訳もなく、俺は返事と言わんばかりに更に強く抱きしめた。
(愛してる、)
最後までとっておく言葉
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