▽ 私の写真
ナースちゃん達と女子会をして、そろそろやる事はやろうかなと自分の部屋へ向かう途中、甲板が何だか騒がしかった。
「いいか野郎共っ!男には、負けられねぇ戦いがある!!」
サッチが何やら叫んでる。それにエースと隊員達が「おう!」と答えている。何だ?敵船?サッチ達の所に飛び出そうとしたら、サッチが懐から何か紙を取り出した。
「この写真が欲しいか、野郎共ー!!」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
何だ、敵船が来たとかじゃない訳ね……
つーか男の雄叫びって何かむさ苦しい…と少し引きつつ写真ってなんだろと不思議に思う。親父のマル秘写真?それなら私も欲しいんだけど!
なんの写真か見ようとサッチに話しかようとした時、もう勝負が始まるみたいで聞けなかった。何か皆の熱気が凄くて…
「全員モップは持ったかー!!」
サッチの問いに皆モップを持ち上げ叫んでいる。何するつもりなんだろ……
「じゃあ、モップ掛けをしながらあそこの壁までタッチしてここまで持ってきたのが1番早い奴にこれを渡す!!」
よっしゃー!と意気込むエースや隊員達。
あれ ……………確かマルコに怒られて甲板のモップ掛けしろって言われてなかったっけ?サッチ………
もしかして写真をネタにエース達にやらせる気か…と気付いた時には走り出したエース達。ドタバタとちゃんとモップ掛けをしてるのか聞きたくなるくらい、皆早い。砂煙が上がるほど。
けどさすが隊長。エースがぶっちぎりでゴールしてきた。
「ちょ、やっぱり隊長ズルいっスよ!」
「ほんとっスよ!加減して下さいよ!!」
「馬鹿野郎。俺は人生に“くい”は残さねぇっての言ってるだろ?」
何、ドヤ顔で言ってんだあいつ。カッコいい場面台無しになるだろ。そんなやり取りの横でサッチが笑って見てるだけ。下らない事させた張本人が、笑ってないでまとめろよ!と思いサッチに一言言ってやろうかとバカ共の元へと歩く。
「エース隊長はいいじゃないっスか!***さんとあんな至近距離に居れるんだし!」
は?私!?
自分の登場にビックリして足が止まる。すると私に気が付いてない隊員達が話し出した。
「そーっスよ!俺達なんて遠くから眺めてるだけなのに、仲良く話してるし……!!」
「悪かったなぁ?俺と***は深ーーい仲なんだよ!」
「じゃあ、***さんの写真ぐれぇ譲って下さいよ!」
写真……?隊員の言葉に思わずサッチの所に駆け寄り手に持っていた写真を奪う。
「え、***ちゃん!?」
「***!?」
「え、生***さん!!?」
バカ共の言葉なんて無視して写真を見てみると、この前上陸した島限定のケーキを大口開けて幸せそうに食べてる私が写っていた。
「ちょっと……サッチ……なにこれ」
「え、いやーあまりにも***ちゃんが可愛くてパシャリとね……!」
「……へぇ…サッチは勝手に写真撮って、それをバカ共を動かす道具に使うんだあ…へぇ…」
冷や汗をタラタラと流すサッチ。こいつ自分の罰を人にさせる為に私を使ったのかよ………
サッチをどうしてやろうかと、指をポキポキ鳴らしていると隊員達が周りに集まってきた。
「***さん、あの………ファンです!!」
「は?ファン?なにそれ」
「俺達***様信者の会の者ですっ!!」
「しんっ………」
思わず“信者”という言葉に引いていると、隊員達が拝みだした。
「ちょ、何で拝むのよっ」
「憧れの***さんを間近で見れると思ってなくて……!」
「生***さん想像以上に綺麗だあ…」
あまりにもキラキラした目で見てくるので「これからは普通に話しかけたりしてよ」って言うと嬉しがる隊員達。なかには泣いてる子も居た。いやいや、あんた等クルーでしょ?家族でしょ?
「ばっ、そんなの俺は認めねぇぞ!!」
「何でエースが決めるのよ…」
「だってよ!ぜってぇ***、こいつ等には優しいだろっ!!俺達には冷てぇのによっ!」
「そりゃあ、この子達はエース達みたいにセクハラしてこないからね」
「俺がいつ***にセクハラしたっていうんだよ…!」
「常にだよ、常に」
たく、こいつわ……エースの発言に呆れているとソロリソロリと逃げようとするサッチ。いけないいけない。
「で、どこ行こうとしてるのかな?」
「あ、え、いやーそろそろメシの用意でもしようかなと………」
アハハーなんて苦笑いをするサッチにニコニコと笑顔で近付く。
この後モビーにサッチの叫び声が響いたのは言うまでもないんだけどね。
- 私の写真 -
ちょ、マルコ!あんたのせいで!!
は?なんだよいっ!
(***の写真は手に入ったしいいか…)
***さん!良かったら夜、俺達とメシ食ってくれませんかっ?
ん?別にいいけど??
ダメだ!***は俺と食うんだ!!
(………何だんだよい……)
(一刻も早く信者の会潰す……!)
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