あおなぐざ | ナノ

▽ お前には敵わない


 
確かにマキノには***の事紹介したかったから、隣町まで来たんだが失敗した。
よりにも寄って何でサボが居るんだよ。サッチとかなら…いや、サッチもサボ以上に面倒な事になりそうだな…

マキノに出して貰ったコーヒーを片手に横目で***とサボの様子を伺っていると相変わらずだ。
男の俺でもカッコイイと思ってしまう笑顔を、俺の女に見せている。しかも年々爽やかさが増している気がする。
何より***がマキノに付き合っている事を言わなかったのも気に食わねぇ。まあ、仮にも先生と生徒の関係だからしょうがねぇのは分かっているけど、分かっているけどサボに隙を見せるとダメなんだよ。

「おい、そろそろ出るぞ」

変な焦りとイラつきから、***に当たっているのは十分に分かる。
だが生憎、余裕というものを持ち合わせていない俺はこんな態度しか取れねぇ。それでも笑顔で俺の後を追ってくる***を見て変な優越感を感じる。

“***は俺に惚れている”
“サボより俺をとった”

と、ガキクセェ事を考えて余裕がねぇという事を実感して変に落ち込む。
だけど***の後ろからクスクスと笑い声が聞こえる。こんな俺を見てクスクスと笑う奴なんてこの場に1人しかいねぇし、そいつのせいでこうなってるっても本人にバレているみたいだ。

「そんなにカッカするなよ、エース」
「……うるせぇよ」

俺が不機嫌なのに気付いていない***は、不思議そうに俺とサボを交互に見て首を傾げている。キョトンとした顔が可愛くて思わず頭を乱暴に撫で、不機嫌なのをバレないようにする。

「折角のデートなんだろ?ルフィは俺が見ててやるから、お前は***ちゃんと楽しんで来いよ」

サボの言葉に素直に喜べず、頼むわと一言残し***の手を取り車に乗せエンジンをかける。
車を走らせるが沈黙が続く。つっても俺が機嫌悪そうにしてたら、そりゃあ***も話しかけにくいわな。いい大人が何ムキになってんだか。

はあ、とため息を吐きながら煙草に火をつける。これを吸い終わったら***に謝ってデートの続きをしよう。そう考え煙草を吸い、灰皿へ吸殻を入れる。

「わりぃ***。確認せずに勝手に煙草吸ってよ、煙たくなかったかって…え?」

思わず目を擦り、もう一度***を見る。目に涙を溜めてプルプルと震えている。
慌てて近くのコンビニの駐車場に車を止める。改めて***を見るが、やっぱり泣くのを我慢している。

な、なんでだ……!?もしかしてサボにヤキモチ妬いてるのが分かって気持ち悪くて泣いてるとか??………あり得る!!!!

「***…?その、なんだ、いい歳して大人気なかったのはすまねぇ…だから泣かねぇでくれ……」
「大人気なかったって何が……?」

えーーーー!!言わせんの!?サボにヤキモチ妬いて苛々してたって。いや、ダメだろ。かっこわりぃ!!!つーか泣いてた理由ちげぇのか!

「気にすんな!!!てか何で***は泣いてんだよ…」
「泣いてない…」
「いや、泣いてんだろ……ほれ、涙拭け」

服の袖で涙を拭くと「ごめんなさい」と***がポツリと言葉を零す。何に対しての謝罪か分からず素で「何が?」と聞き返してしまう。

「やっぱり私みたいな子供じゃ楽しくないでしょ??……マキノさんと話してるエース先生凄く楽しそうだったのに……私と居るとため息して……楽しくなさそうだったから……」

***の言葉に今までの自分の行動を振り返る。
マキノの店を出る時も本当は悲しい顔してたんじゃねぇのか?
だけど俺に分からねぇように笑顔だったんじゃねぇのか?

自分の大人気なさに心底嫌になる。何で自分の事しか考えれねぇんだよ。
***は俺の事考えて分からねぇように自分の気持ち隠して……

「ごめんな?」
「……何でエース先生が謝るの??」
「……サボにヤキモチ妬いて余裕なかった。さっきのため息も自分の大人気なさが嫌になって出ただけだ……ごめんな?***は何も悪くねぇよ」
「本当??」
「本当。だから泣くな、な?」

目をパチパチさせ、これで泣き止んだかなと思った途端「良かったあ」とさっき以上に泣き出す***。

「はっ!?何でさっきより泣いてんだっ!!?」
「だって、やっぱり大人同士の方がいいのかなとか、こんな事勝手に考えて泣くような奴は嫌われるかなとか考えてたら……」

うぅーと言いながら鼻水を垂らし泣く***を見て、昔と同じ泣き顔で何だか懐かしくて愛しい気持ちが込み上げてくる。昔とはまた違う愛しさが。

泣きじゃくる***の前髪をクシャクシャと撫で、なるべく優しく額にキスをする。
するとさっきまで泣きじゃくっていた***の顔が、真っ赤になり恥ずかしかったのか俺と目を合わせなくなった。

たく、可愛い反応してんじゃねぇよ……これでも卒業するまでは手ぇ出さねぇって決めてんだからよ、在り来たりだけどよ。


- お前には敵わない -


そろそろ泣き止まねぇと上手いデザート食わしてやんねぇぞ?
デザート!?泣き止んだっ!!!
(たく、ゴシゴシ擦るから赤くなってんだろうが…)



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