あおなぐざ | ナノ

▽ 振り回されてばかり


  

私の人生の中で一番勉強したのは今回だと思う。




『つ、疲れた……』


終わったばかりのテストにホッとしたのもつかの間、帰りのSHRでマルコ先生が他人事のように「早い教科だと明日にはテスト返しがあるからな」と言った。いや、実際マルコ先生からしたら他人事だが、生徒の事を考えるならテストから解放された喜びを噛み締めさせて…!!と、勿論マルコ先生相手に言える訳もなく心の中でヒッソリと考える。


連絡事項が終わるとさっさと教室を出るマルコ先生に続き生徒達も続々と教室を出て、各々の行動を取る。やっと部活が出来る!と言わんばかりに張り切って教室を出る者、テストが終わり解放された嬉しさに遊びに行こうとする者。
勿論、帰宅部の私はさっさと家に帰りますがね。テストが終わるまで我慢しようと録画しておいたドラマを見るからだ。


『終わったもんはしょうがないし、我慢してた分遊ばないとねぇ!!』
「あんた急に変な事言い出さないでよ…」
『まあまあ、気にしない!!帰ろー!!』


そう自分に納得させナミに若干引かれつつも帰宅する為、下駄箱へ向かいローファーに履き替える。
まあ、私にしては今回頑張ったし大丈夫でしょ!!
何を根拠にかは分からないが、テストが終わった嬉しさにルンルンで家へ帰った。










『嘘でしょ………』
「終わったもんはしょうがないんでしょ?」



ある教科のテストを握りしめる私に「ま、こんなものね」と自分のテストを綺麗に折るナミ。確かに私言ったけど、これはあまりにも酷くない!?


『回答するの忘れてた!!』


そう、本当に凡ミス。見直しをしかっりしていれば気付いていたであろう見落とし。思いの他自分がスラスラと答えを書けているのが嬉しくて、唯一手が止まった問題を後回しにしていた事をすっかり忘れていた。
そして、例えスラスラ問題が解けたとしても答えが合っているかは別だ。ただ、自分のこうであろうという答えが書けただけで正解ではない。
その凡ミスのおかげで学年平均に2点、点数が届かなかった。その答えを何かしら書き、それが合っていたのなら学年平均の上だ。


だが、そんな事を言っても勉強不足には変わりはない。
自分の無力さになきそうになりながらもスマフォを制服のポッケから取り出し、ある人へとメールを作成する。


【すいません。折角エース先生が平均点以上取ったらデートしてくれる筈だったのに、取れませんでした。】


いつもは、どんなメールでも何かしら絵文字を付けるが今日はそんな気分にはならなかった。
だってエース先生とのデート楽しみにしていたから。
スマフォの画面を閉じ、机に顔を伏せる。楽しみにしていた分悔しい気持ちが大きい。



結局テストが終わって1週間でテストは全て返された。ギリギリのもあったが、あの1教科以外平均点は超えていた。なので余計悔しい気持ちが膨らむ。


そして何よりあの日私がメールを入れてからエース先生から返事は来ない。
もしかして勉強が出来ないからフラれるのではないか、と勝手に変な方へ考えてしまう。
そんな私は授業に出ず保健室だ。たしぎ先生に顔色が悪いと心配され無理やり保健室で休まされている。
先生に心配されるぐらいって、そんなに酷かったのかな……


つくづくエース先生の事になると周りが見えなくなる。
子どもな自分に嫌気がさし目を閉じる。すると誰かが心地いい力加減でポンポンと叩いてくれて睡魔が大きくなる。


パッといきなり目が覚めユラユラと揺れているカーテンが目に入る。
あれ?私がベットに横になった時窓は閉まってたはずなのにな…。寝ぼけながらだるい体を起こそうとすると、なぜか太もものあたりが重たい。不思議に思いつつ視線を太もものあたりを見てみると、そこには何故かエース先生の頭が乗っていた。


『はっ!?ええ??』


驚く私の声にどうやらエース先生は目が覚めたみたいで、のそりと起き上がり「目ぇ覚めたか?」と目を擦りながら聞いてくる


『え…お、おかげさまで……』
「そうか!***が体調悪そうだったってたしぎ先生が職員室で言ってたから、つい授業補習にして見に来ちまった」


笑いながら言うエース先生を見て思わず視線をそらす。すると何か勘違いをしたのかエース先生が謝りだした。


「もしかして返事しなかった事に怒ってるか?悪りぃ、早く採点しねぇといけねぇから返事出来なくてよ…」


申し訳なさそうに言うエース先生。
分かっていた。エース先生が下らない理由でメールを無視したりしない事は。分かっていた筈なのに勝手に不安になっていた。


『謝らないといけないのは私です…。テストダメでした。』


言ったと同時に涙が出る。けど自分の勉強不足のせいだ。泣くのは筋違いだ。
分かっているけど、エース先生とデートが出来るチャンスが無くなった事を改めて認めてしまい、悔しくて涙が止まらない。
そんな私にエース先生は何も言わずじぃっと見つめてくる。やはり呆れてしまったのではないか…マイナス思考が頭の中をグルグルと駆け巡り出した時「ばーか」と少し笑い声が混じりながら言われた。


「たった2点だろ?………他の教科はちゃんと平均点より上だった。普段は平均点より少し下だったお前にしちゃあ、上等だろうが。」
『けどエース先生とのデートが…』
「ほんとお前馬鹿だな。あんなの***とデートする口実に決まってんだろ?ちょっとした意地悪のつもりと、教師としてテスト頑張って欲しくて言っただけだ。」
『なにそれ………』


エース先生の言葉にはあ、とため息をするとグシャグシャと髪の毛を触られる。もう!と少し怒りながらグシャグシャんにされた髪の毛を手櫛で整えていると私の大好きな笑顔の先生。


「今度の土曜10時にむかえに行くから」


そう言って保健室を後にするエース先生に小さく「はーい」と返事をした。







- 振り回されてばかり -






なんかエース先生に振り回されてばっか……卒業式の日も今回も……まあ、デート無くならなくて良かった…


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