▽ 冗談で流された方がまし
『はあ………』
トイレの鏡の前でため息をつく。ローと会うのが気まずくて仕方がない。こ、告白自体されるの初めてだったし………
チャイムが鳴る度にトイレへ逃げている訳で。こんな事ローにも失礼なの分かっているんだけど、恥ずかしくて前みたいに接しれない。
そろそろ予鈴鳴るな…
少し憂鬱になりながらも教室に向かう。この曲がり角を曲がれば教室。そう思うと少し緊張してきたり……
また『はあ』とため息をつきながら歩き出すと、いきなり空き教室へと首根っこを引っ張られた。これわ……
『なんですか…エース先生…』
「んだよ、驚かねぇのか」
こんな事するのエース先生しか居ないし。
じとぉーっとエース先生を見ているとお構いなしに煙草を吸い出すエース先生。
『いいんですか、こんな所で吸って』
「あ?大丈夫だろ!」
ニカッと笑うエース先生。いや、ダメなんじゃ……
するとフゥーと煙を吐きながら私の方を見てくる先生。イ、イケメンずる…
「お前何か悩んでるだろ?」
まさかの図星に言葉がつまる。『そんな事ないですよ』ってやっとの思いで言っても「バレバレ」と即答された。
「ま、ローに告られたのが悩みの種ってとこか」
『…!!何でエース先生分かったの!?』
「えっ!?あぁ、……お前明らかにローの事避けてんだろ(…たまたま聞いちまったなんて言えねぇつーの…)」
エスパーかと思った。ドンピシャで悩んでる事言うから。何かエース先生は変な汗かいてるけど。
『まあ……そんな所です』
「何で避けてんだよ。別に変な事してきたとかじゃねぇのに」
『いや、あの……気まずくて…今までローの事友達としか見てなかったし…』
チラリとエース先生を見るが「ふーん」と何か考えてるようだった。てか何で私好きな相手に告白された事相談してんだろ…
少し悲しくなって居るとエース先生が口を開いた。
「俺はお前とロー、お似合いだと思うけどな」
『え………』
「いいじゃねぇか。成績優秀、見た目もバッチリ。言う事なしじゃねぇか!」
サラリと言う先生の言葉が胸に刺さる。お似合い…
好きな人に他の人とお似合いって言われるとなかなかキツいな……
涙が溢れそうになるのを必死に我慢しているとエース先生が「頑張れよ」って笑顔で頭を撫でてくる。
前までは凄く嬉しかったはずなのに、今日はズキズキと胸が痛む。
『わ、私はエース先生の事が「***」
全く意識されてないのは分かった。けど少しでも意識して欲しくてエース先生に気持ちを言おうとするとエース先生に遮られた。
「お前のその気持ちは憧れってやつだ。その年頃は年上が良く見えるもんだ。」
『っ………』
そう言ってまた煙を吐く先生。線を引かれた。“先生”と“生徒”というのをハッキリと。
気持ちすら言わせて貰えない………
その事に涙が溢れる。するとエース先生が指で涙を拭いてくれた。嬉しいのに気持ちを言わせて貰えなくて悔しい。
エース先生の手に自分の手を起き先生を見る。
『先生がそう言っても私は先生のこ「***。」
さっきより少し低い先生の声に思わずビクッと体が動く。
「言っただろ?俺はガキが嫌いだって。」
そう言って涙を拭いてくれた手が離れる。先生の顔がいつもみたいな優しい顔じゃなかった。冷たい目。
先生のそんな表情を見て思わず固まる。すると予鈴が鳴った。
『………すいません。教室に戻ります』
走って教室を出て自分の教室へと向かう。
先生が優しいから少し期待してた自分がいた。あんな表情されるなら、いつもみたいに冗談で流された方がましだった。
- 冗談で流された方がまし -
今までシリアスな展開なかったじゃん……
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