Every day with the dearest person | ナノ

▽ さようなら


 
ナースやシェリーのおかげで大分落ち着いた気がする。
持ってきて貰ったフルーツを口にしていると、ドアが勢いよく開いた。そこには少し緊張気味のエースが立っていた。
どうしたんどろう、と思っているといきなりシェリーが立ち上がり「戻るわね」と言いエースに何か言って部屋を出て行った。エースと2人っきりなんて今まで沢山あったのに、何故か緊張している自分がいた。

「怖い顔してどうしたのエース?」
「あー……ちょっと話があんだけどよ」

私の横に腰をおろしたエースのその言葉に体が思わず強ばる。もしかしてさっきの夢じゃないけど、エースは私の事を軽蔑した…?別れ話されたりするの…?嫌だ。お願いだからそれだけは嫌……!!

「ずっと言おうと思ってたんだけどよ、そのー…」

目線を合わせず、どことなくいつもと違うエースに焦りしか出てこない。嫌な汗のかき方、血の巡り。それを落ち着かせようと深呼吸しているつもりが、変に呼吸が荒くなっていくのが分かった時、私の大好きなエースの胸元が視界一杯に見えた。

「どうした***!?落ち着け!!ゆっくり息を吸え!」

背中を擦り、優しく声をかけてくれる。その声に合わせて呼吸をする。荒くなっていた呼吸が整いだし、苦しくて出てきた目に溜まった涙を拭うとエースと目があった。私の表情を見て安心したのか、フゥーとひと呼吸をした。

「大丈夫か?いきなりハァーハァー言い出すから焦ったぜ?」
「……ごめん。もう、…大丈夫だから……」
「ならいいけどよ!で、そのー…さっきの続きなんだけどよ、」

そのエースの言葉に思わずビクリと体が強ばった。拭ったばかりの涙がまた、目に溜まってきているのが分かる。だが、そんな私にお構いなしに先程の話を進めようとしているエースの言葉を遮るように私も言葉を発した。

「あ、あのさ!!それ大事な話かな…?その…私あまり体調が……」

勇気を出して発した言葉も直ぐに無駄だと分かった何故なら真剣な表情で、私を見ていたから。そうか…エースはもう覚悟を決めたのか…。覚悟というか私と別れると決めて来たんだ……。もうここまで覚悟を決めた表情をしているエースの気持ちを、私が邪魔しちゃいけない…

「……ごめんエース……話聞くよ」

言葉がスムーズに出ず詰まり詰まりだが、発するとエースの体が私から離れた。
ああ、これでエースに抱きしめられるのも最後。エースの傍に居れるのも最後。もう一緒に馬鹿な事も出来ない。これから先、エースに彼女が出来た時、私は笑って喜べるのだろうか。それ以前に、エースは今まで通りじゃなくても接してくれるのだろうか。

そんな事を考えていると視界が霞む。涙を零すな。泣くと困るのはエースだ。
ゴソゴソと目の前で自分のポケットを探っているエース。するとピタリと動きが止まりまた、目があった。すると「あのよっ!!」という大きな声と共に何かを差し出された。

「これから先、ずっと***と一緒に居てぇ。これから先、今回みてぇな事が起きたら…今度は俺がしっかり支える。だから、俺と……家族になってくれねぇか?」

そう言って差し出された小さな箱には綺麗に輝く指輪が入っていた。薄いピンクの石が埋め込まれている指輪と、驚きで言葉が出ない私を見て少し焦っている表情をしているエースを交互に見る。何も言わない私に焦っているのか少し早口でエースが喋りだす。

「いや、今も家族なんだけどよ!その、なんだ…俺と特別な家族につーか、その…」

モジモジとしながら言うエース。先程とは違う涙が頬をつたう。気持ちも、焦りや不安しかなかったのが、少しづつ温かいものへと変わっていくのが分かる。
そんな事を実感していると、エースの「返事は…」という珍しく泣きそうな表情に我に戻った。返事なんて決まっている。断る理由なんてない。

「私でよければ、宜しくお願いします…」

座ったままの状態だが深くお辞儀をしながらそう言うと、「ヨッシャー!!」という大きな叫びと共に押し倒された。視界一杯にエースの照れた顔が。

「ほんと良かった…。断れたらどうしようかと思ったぜ…」
「私が断る訳ないじゃん…。私こそ良かった…別れ話されるのかと思ったよ……」
「ばーか。それこそ俺がそんな話する訳ねぇじゃん。」
「てか、いつこの指輪買ったの??」
「あー、あん時!2人で島行った時こっそりとな!」
「あーあの海軍に追いかけられた時ね……」

コツンとおでこに自分のおでこをくっ付けたエースとプ、とお互い笑い出す。やっといつも通りになり安心して笑っていると、軽くキスをされた。

「じゃあ…改めて宜しくな……奥さん」
「こ、こちらこそ宜しくです…あ、あなた??」
「なんでそこ疑問形なんだよ」

そう言ったエースとまた笑っていると真剣な表情のエースにまた、キスをされた。今度は深いものを。
これからもエースの傍に居られる。幸せを噛み締めながら私は目を閉じた。



- さようなら -



少しでもエースを信じなかった自分にさよならだ。
これから先は何があってもエースを信じる事を誓うよ



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