Every day with the dearest person | ナノ

▽ 分かっている


 
息を潜めドアの前で部屋の中の様子を伺ってた俺は、***の本心を聞きその場で立ち尽くしてしまう。

そうだよな……誰だって最初はこえぇよな、人を傷付けるのは。
しかも今まで平和で、争い自体が日常茶飯事じゃない世界で生きてきた***にとったら特にだ。
なのに俺は深く考えず、あんな事を言って***の気を間際せれたのだろうか。あんな事を言って余計気にしているんじゃないだろうか。

そんな事を考えていると***の部屋に入る勇気もなく、甲板の方へと足を進める。
俺が***の側に居ていいのか?苦しめるんじゃねぇか?無理していつもどおりに装うんじゃねぇのか?そんな***に俺は何をしてやれるんだ…?

「邪魔な所で何つったってんだよい。」
「……マルコ」
「まあ、単純なお前の事だ。何考えてんの分かるがな」

流石というか、恐ろしいというか……マルコには何でもお見通しでこえぇよ。ハッと、少し掠れた声で笑う。マルコみてぇな大人なら***にあんな思いさせなかったのか?あんな事が起きないように出来たのか?***は俺とじゃなく、マルコと付き合った方がっ…

「おい。何しょうもねぇ事考えてんだよい。口に出してんのはワザとか?」
「口に出てたか……?」
「思いっきりな。大体、今回の事はいつかくる事だと分かりきってただろうが。何を今更無駄な事考えてんだよい」
「無駄ってなんだよ…」
「無駄な事だろ?***が俺なんか興味持つ訳ねぇだろ。最初からお前ばっかりだったじゃねぇか。」
「けど、マルコだったらもっとうまい事しただろっ!!?」

俺の言葉にため息をこぼすマルコ。だってそうだろ?俺はマルコみてぇにどんな事も完璧に出来ねぇ。自分の事で精一杯だ。***があんな思いをするなんて考えてもいなかった。

「だったら***を元の世界に戻すか?」
「んなの、嫌に決まってんだろ!?つーか、んな事出来んのっ……」
「だったら、お前がしっかりしろ。お前が***をこっちの世界に連れてきたんだろ?***もそれなりに覚悟して、この世界に来てるはずだ。なのにお前がそんなに頼りねぇと誰を頼ればいいんだ、あいつは。好きな女くれぇちゃんと守れ。」
「………そんな事分かってんだよ!!守りてぇよ!けど……これからも先、戦いがある度に***にあんな思いをさせると思うと不安になる……」

ほんとにこのままでいいのか?ナースが言ってたように、平和な島で暮らさせた方が***の為なんじゃねぇのか?考えれば考えるほど、どうするのが***の為になるか分からなくなっていく。だが、ただ1つ分かる事がある。

「どうすれば***の為か分かんねぇ……。けど、俺はやっぱり***と離れたくねぇ。***がまた、今回みてぇな思いをするとしても俺は傍にいてぇ。やっぱり俺は自分の事で精一杯なんだよ……」
「……たく、それで十分なんじゃねぇか?***自身、お前が傍に居るだけで心強いモンもあるだろ。変にグダグダ考えねぇでお前が***の支えになってやれ。じゃねぇとシェリーに取られるんじゃねぇか?」

マルコの言葉に思わず、動きが止まってしまった。マルコは冗談のつもりで言ったのかも知れねぇ、けど普段からの***に対するシェリーの行動を見ると本当に取られそうだ。それだけは避けたい。
そう本能的に思った俺はマルコに「さんきゅ、」とぼそりと呟くと、ある所に足を進めた。ある所と言っても自分の部屋。部屋についた早々、ベットの脇にある小さな棚を漁り少しホコリの被った箱を取り出し、荒々しくドアを開け***の部屋に向かい走り出す。

前から言いたい気持ちはあった。ただ、今まではただ好きだという気持ちだけだった。だけど少し変化が出来た。出来たというより、覚悟が出来た気がする。***の部屋の前につき、深呼吸をする。何回も、何十回もし、ドアを開ける。

やっぱり俺は自分の事で精一杯なんだ。
俺は***の笑顔が好きだ。もっと一緒に馬鹿な事をして、マルコに怒られて、一緒に笑って……***に何かがあった時、良い事だろうが悪い事だろうが***の一番近くの場所に俺は居てぇ。

嫌って程深呼吸をし、ドアノブに手をかけ勢いよくドアを開けるとシェリーと楽しそうに話している***。わざとらしく「あー……」とシェリーを見ながら声を発すると、何か感じ取ったのかシェリーが立ち上がった。

「じゃあ***、私はそろそろ戻るわね?後エース隊長?***の事頼みますよ?」
「………分かってるよ」

俺の返事に満足したのか少し笑い部屋を出てったシェリー。
分かってる。これから先、また同じ事が起きたとしても俺が***を守る。
俺が***を笑顔にする。何度でも。



- 分かっている -



?怖い顔してどうしたのエース??
あー……ちょっと話があんだけどよ、



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