Every day with the dearest person | ナノ

▽ こんな自分が嫌になる


 
抱きしめてくれる彼女…いや、彼。
シェリーと入れ替わったであろうエースが力強く抱きしめながら私の耳元で「良かった…」と何度も言い、頭を撫でてくれる。その抱きしめ方、安心するような言い方に思わず涙が溢れそうになる。


エースが助けに来てくれた。
女と入れ替わり、来てくれたシェリー。それも嬉しいが、エースが来てくれたというだけで、嬉しいという感情よりも安心感のが大きかった。だが、それと同時に自分の無力さに腹が立った。
あんだけエースに言っておきながら結局は助けられている。自分の無力さに唇を噛み締めていると、女…に入っているシェリーがエースが入っている自分の頭を叩いた。


「エース隊長!!いい加減離れて!今は逃げる事が大事でしょ?早くっ!!!」
「いってぇな!!!分かってらあ!!!***!行くぞ」


私の手を取り走り出そうとするエースの後ろで、また刀を振り上げている長の姿が見えた。エースもシェリーも気づいていないようで、気づいているのは私だけだ。長が刀を振り下ろした瞬間、私の体も動いた。
せめてこれだけでも…皆の役に立ちたい…!!
さっきまで傷んでいたお腹が嘘のように勢いよく立ち上がり、2人を押しのける。


「危ないっ……!!」


私の声と同時に私の左鎖骨から斜めに刀が振り下ろされた。
痛いという感覚より、自分の体から吹き出した血で視界が赤くなり、そこで痛いという感覚が出てくる。


「***!!おい!!!」
「エース隊長どいて!!早く止血を…!!」
「はは…いった…」


私、結構頑張って押しのけたのにな…。2人共簡単に戻ってきてさ…頑張り無駄になるじゃんか……慌てる2人を見て少し笑いが溢れる。


「***、大丈夫か!?シェリー!早くしろ!!」
「わかってるわよ!!」
「いいから…」
「は?」
「私の事はいいから早く2人共逃げて……!」
「何言ってるの?***…?」


私の言葉になかなか動じない2人の後ろからまた長が刀を構えていた


「早く!!!」


私の言葉なんて聞いていない様子の2人。その後ろでニヤリと笑い刀の刃をこちらに向けている長。流石に切られた所が痛み動けそうにない。また助けられない。ティーチに会ったときと同じ。勝手に飛び出して助けられて、今回も助けられる………。
それだけは嫌だ。私だって…私だって海賊だ。ただの一般人だったけど、もう1人の海賊なんだ。仲間を…恋人を守れて死ぬなんてカッコイイじゃないか。


そう思うと自然と足にも力が入る。人間、死を覚悟するとどんなに辛い状況でも体は動くんだ…。
そんな事を考えながら立ち上がった瞬間、私の横を何かが風を切って通り過ぎた。何かが通り過ぎたかは、痛がる長を見て分かった。右肩を押さえる長の視線の先には、人が死ぬ気で動こうとしていたのがバカらしくなる面構えをしたおっさん達がいた。


「たく、無茶しすぎなんだよ。お前ら」
「***ちゃん、シェリーちゃん無事かー?って大怪我じゃん!!」
「シェリー!!さっさと元に戻れ!!で、……その怖い顔した奴に後片付けでもさせとけよい」


オッサン達の言葉にシェリーも笑みを浮かべ、連れてこられたであろうエースの中に入っている女が私達の目の前に投げ出される。シェリーの「チェンジ」という声と共に、元に戻ったエースが長をめがけて殴りかかっていた。




- こんな自分が嫌になる -




(エースの背中……。船を出る前に言い合った時は遠くに感じたけど、今は凄く近く見えるし…頼もしいな……)





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