Every day with the dearest person | ナノ

▽ 安心します


   

口の中に鉄の味が広がる。
ご丁寧に腕も縛られ目の前には、ニヤニヤと気持ち悪い表情でこちらを見てくる長。


「本当…海賊の女は気が強い方が多い……。キスをしただけで唇を噛まれるとは…」
「気だけでも強くないとやっていけないのよ。こんな小さな島に海楼石なんて物があるなんてね」
「頑張って入手したんだ。こんな小さな島だから海賊に襲われると、直ぐに壊滅されちゃうんでね……。」
「ほんと、1つ分けて頂きたいくらい。どこで手に入れたか教えてくれない?」
「ふふ………それは貴女が本当にここの住人になって頂けたら教えますよ?賞金首が島に居ると心強い!!それに元白ひげの一員ともなれば、名前を聞いただけで逃げ出してくれる海賊も少なからず居る筈だ…!」


嬉しそうに手を広げ言う長にハッと笑ってやる。


「白ひげのクルー辞めるくらいなら死んだ方がマシだから。それに残念ながら白ひげクルーの中で私が一番弱いから。」


私の言葉にピクリと長の眉が動く。はあ、とため息を付いたかと思うと思いっきりお腹を蹴られる。その衝撃で口から胃液なのか何かのか分からない物が出る。


「ガッ…!ゴホッ……!!」
「全く…。いつになったら貴女の命は私の手にあると気が付いていただけるのか…」
「わ、分かりたくもないね……!!大体、私の命は親父様の物だから。」


また長の足が私目掛けて近寄ってくる。衝撃を耐えようと少しでも身を縮めるとドンドンとドアを叩く音のおかげで長の足が目の前で止まる。長の「どうした」と言う声でドアが開く。
助かった……。ホッとしていると、そこに居るのは私に弱々しく声をかけて来た女だった。一瞬目が合い、口角が上がった。ザマァミロって事か…?困るよ、本当……


「長様…。後は私達がしますので、そろそろおやすみになられた方が…」
「いや大丈夫だ。それより……今日お相手を頼んでもいいかい?」
「長様……。」


女の手を取りそう言う長。そしてその長の手に自分の手を重ねようとする女。何が嬉しくてこんなの見てなきゃいけないんだか……。必死に海楼石の手錠を取ろうとするが勿論取れる訳はなく、体力を消耗するだけだ。
どうしようか考えていると長が女を抱きしめようとした時、女が長を投げ飛ばしていた。


「汚ねぇ手で触ってんなよ、クソジジィ!!!!」


まさかの場面に驚いていると女が近寄ってき、いつ奪ったのか分からない鍵で私の手錠を外しだした。
どうゆう事か把握できていない私にお構いなしに、手錠を外し私の手を取り走り出した。ビックリしたものの、手を振り払い女との距離を取る。


「……助かったから礼は言うけど…どうゆうつもり?」
「折角助けたのに酷いじゃない!」
「は?誰のせいでこうなったと思ってんのさ」


思わず女の言葉にただでさえイラっとしているのに、女はフフと笑っている。それが余計、私を苛々させる。すると私達の後ろからドタドタと荒々しい足音が響いてくる。振り返ると刀を持った長がこちらに向かって走ってくる。
兎に角逃げようと走り出すものの先ほど蹴られたせいか、お腹がズキリと痛み出遅れる。それを見逃しはしないと言わんばかりに、私に刀を向ける長。


しまった……!!!


ぐっと口を食いしばると「くたばれ!!!クソ野郎がぁあ!!」と言う叫び声と共にシェリーが長に向かって飛び蹴りをしていた。普段のシェリーでは考えられない言動に、逃げようとしていた足が止まる。
そんな私を他所に、女がシェリーを軽く叩いているもんだから余計に足が止まる。


「ちょっとエース!!私の格好でなんて事するのよ!!」
「うっせ!今はそんな事言ってる場合じゃないだろ!!?***大丈夫か!?」
「ちょっと怪我はしたけど大丈夫……って、え?」


良かったと安心したような声で私を抱きしめてくるシェリー。
と、いうかもしかして……


「もしかしてエース…??」


私の問いに一瞬、抱きしめる力が弱まったかと思うと、さっきよりも強い力で抱きしめられる。姿はシェリーなのに何故か懐かしいような…安心するような感覚にとらわれる。


「わりぃ……来ちまった……」


そう言って申し訳なさそうに笑うシェリーは、もうエースにしか見えなかった。








- 安心します -




ちょっと!!私の事忘れないでよね!!
ご、ごめんシェリー…
うるせぇ。久々の***タイムなんだよ、邪魔すんな



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