Every day with the dearest person | ナノ

▽ 在り来たりな事も実際は辛い




村の住人として、暮らし始めて1週間が過ぎた。
だが、噂のとは違い極普通の生活をしていた。長にもあの時以外会っていない。噂が本当なのか確かめたいが、仮にも住人だ。ある程度の仕事を任される。
と、言っても作物を作る為に畑を耕したり布を編んだりしている。


他の女達も噂とは違い、私やシェリーと共に作業をしている。……性奴隷と言われていたが、夜も私達と一緒に過ごしている。ただ、男達が居ないのが、やっぱり何か引っかかる。だが、下手に女達に聞いて警戒されても困る。


早く片付けてモビーに…皆の所へ戻って…エースと仲直りしよう。そしてドヤ顔で言ってやるんだ。どうだって。だから早く……


「***、顔に出てる。焦りすぎよ」
「え?嘘っ…」
「本当。まあ、気長にやるしかないわ。経験上……焦って行動すると必ず相手の思う壺になる。***が焦る気持ちも分かるけど、焦るのもダメ。顔に気持ちを出すのもダメよ?」
「……そう、だよね。ごめん…。」


少し微笑みながら私の頭を撫でてくれるシェリー。本当、シェリーが一緒に居てくれて良かった。1人で来ていたら焦って失敗していた。


感謝しつつ、目の前の作業を進めているとか細い声に名前を呼ぼれた。振り返ると私と同じくらいの歳の女が立っていた。人の名前を呼んでおきながら、視線が一向に私と合わさる気配がない。服をキツく掴んでいるせいで、服に深いシワが刻まれている。



「長様が…今夜***さんとお食事がしたいようなのですが……」


私でも分かる。この女、何か隠している。
声も震え、相変わらず目を合わす気配もない。……だが、いい機会だ。絶好のチャンス。



「ええ、喜んで…!今夜が楽しみだな、」
「じゃあ、長様に伝えておきますね」


私の返事を聞き、そそくさと何処かへ行ってしまった。
今夜…何が何でも、何かを掴まないと自分自身の気も済まないな、そう考えているとシェリーにまた「***、顔」と言われ思わず泥の付いた手で顔を隠す。


「***…貴方大丈夫?私も一緒に………」
「ご、ごめんっ大丈夫だから!!絶対ヘマはしないから!!」
「本当?ならいいのだけど…。アレだったら私が***に入って代わりに行くけど…」
「大丈夫だよ!!それにシェリーに助けて貰っても意味がないの…。自分で何か結果を出してエースに報告するんだ…。私も出来るんだって!」
「…そう?無理はしないで?危険を感じたら任務とか関係なく、私を呼ぶのよ?」


約束、とお互い話、作業を進めた。早く、早く日が暮れろと考えながら。








殆どの女達は床につき、起きているのは食事の片付けの当番の女達のみ。そんな家の中を綺麗な服を着て歩く。最初、案内された部屋へ記憶を辿り歩いていく。部屋の前に付き、深呼吸をし扉をノックすると中から長の声が。


「***さんか…?待ってたんだ、入ってくれ」
「失礼します…」


少し控えめに声を発し、ドアを開くとそこには小さな机の上に数種類のお酒のビン。先に飲んでいたのか開いているビンもある。長に呼ばれるまま座り、グラスに注がれるお酒を眺める。注ぎ終わったのか差し出されるグラス。


「さあ、是非飲んでくれ!この島特製のお酒で美味しいんだ」


そう言われるもののグラスを見つめる。
大丈夫なのか、このお酒…。だが飲まない訳にもいかないな…。
目の前で胡散臭い笑顔でこちらを長が見ているからだ。覚悟を決め、グラスに入っているお酒を一口、口に含むが特に変な味がする訳でもない。それどころか美味しいくらいだ。


「どうだい?美味しいだろう?良かったらもっと飲んでくれ」
「…………はい、頂きますね」


長も飲んでいるし、大丈夫だろう。そう決めつけ注がれていくお酒を飲み干していく。
30分くらい軽い話をしながら飲み続けていく。
そろそろ噂に関して少し聞き出すか…そう思い、自分も長にお酒を注ごうとビンを持とうとした時、手元からビンが落ち、その衝撃でビンが割る。


「ふう……やっと薬が効いてきたか……。なかなか様子が変わらないから白ひげの人達は薬物対策の訓練でもしているのかと思ったよ。死の神***さん…?」


あの胡散臭い笑顔で近づいて来る。体を動かそうにも動かない。少しでも抵抗しようとするが、出来ない私の頬を触る長。


「最初は見間違いかと思ったが…本物とは思って居なかったよ」
「……うるさい…。てか触らないでくれます?」


頬を触っていた手が私の頬を叩く。乾いた音が部屋に響き頬がジンジンと痛む。


「今、君は私の手の中にある事が分かっていないようだ…」


長の顔が近づいて来るのと同時に唇に長の唇が重なった。








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(……エース…)



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