Every day with the dearest person | ナノ

▽ 過保護に扱われたくない





「ぜってぇ俺は行かせねぇ!!!」



のどかな海にエースの声が響く。気持ち良さそうに飛んでいたカモメもエースの声にビックリし、急いで方向転換をしてどこかに飛んで行ってしまった。


「そんな事言ったって仕方がないじゃん…」
「んな危ねぇ事を***にさせれるか!他の奴がすりゃあいいだろうが!!」


私の言う事に全く聞く耳持たずのエースにクルー達も遠目に見ている。まあ、今のエースに何を言っても仕方がないというのは皆が分かっているからだ。
しかし、いつまでも駄々をこねられても仕方がない事は仕方がない。どうするものかと悩んでいるとエースの頭に鉄拳が落ちた。


「いつまでもギャーギャーうっせぇ!***は文句言わねぇんだ。おめぇも腹ぁくくれよい!!」


そう言って青筋を立てながら怒るマルコにも、ご機嫌斜めのご様子のエース。若干ハラハラし出すクルー。ちなみに私も少しハラハラしている。
こんなにもエースが怒っているのかというと、私のこれからの任務に文句があるみたいだ。


別に白ひげ海賊団は全世界の皆を守る海賊団ではないが、親父様がああだ。曲がった事は気に食わない。小さな島だろうが、困っている人が居ると自分のナワバリにして島の皆を助けてしまう。そんな親父が風の噂で、ある島の話を聞き調査してこいという事だ。


なんでも女ヶ島ではないが人口の殆どが女。しかしその島の長だけが男という。そこまでなら別になんともないが、どうやらその長が男達は島の地下深くで奴隷のように働かされていると聞き、親父様が気になったらしい。それも女達も人間とは扱われず、ただの長の性奴隷に近い事をされているらしい。


そこで潜入が得意なシェリーと唯一の女戦闘員という事で私が潜入し、少し様子を見てくる事になったのだが、それが気に食わないらしい。


「うちはナース以外に女クルーはこいつ等しかいねぇ。他に誰がするんだ」
「………女装でもすりゃあ…」
「どいつもこいつもごつい。ごつい女なんて警戒されてるだろうが。大体親父の指示だ。隊長のお前が文句言うんじゃねぇ」


マルコの冷静な言葉に渋々ながらも納得した様子だ。


「うまくいけば早く帰ってくるし、シェリーも一緒だしさ…」


恐る恐るエースに近づき、あやすように言うと眉間に深いシワを寄せたエースがこちらを見て明らかに怒っている声のトーンで話出した。


「なんで***は平気なんだよ」
「…え?」
「女だけって事は俺は勿論、他の奴等も何かあってもすぐに助けてやれねぇ。そんな危ねぇとこ行くんだぞ!?」
「でも親父様の指示だから仕方が…」
「んだよ!!俺の言う事は聞かねぇくせに親父の言う事は聞くのかよ」


………分かってる。エースは心配して言ってくれているって。
けどさ、隊長が船長の言う事を聞かないってどうなの?しかも私情をはさんで。
心配してくれているという有難さより、過保護…というより我が儘を言うエースに段々苛立ってくる。だが、なんとか心配してくれているという気持ちで平常心を保とうとしていたのに「彼氏の言う事聞いとけよ、な?」というエースの言葉に私の頭の中の何かが切れた。


「エース…あんたいい加減にしなさいよ……。」
「あ?どうした***…」


明らかにいつもと違う私の態度に少し焦ったエースが私の肩を触ろうとするが、その手を払う。


「隊長がそんなんだと、他の隊員に示しがつかないでしょ…。私は確かにエースとは恋人関係だよ?けど白ひげ海賊団のクルーでもあるの。クルーなら船長の指示は絶対。自分の我が儘で、行きませんなんて言える訳ないでしょ?てか言わない。親父様は私を拾ってくれた人、命の恩人だもの」
「拾ったって…***を見つけてここに連れてきたのは俺じゃねぇか!!」
「確かにエースだよ。だけどここで生活していいと…得体も知れない奴を仲間にしてくれると言ったのは親父様。私も他の皆と同じ、親父の為なら命をはって動く。」



真っ直ぐとエースを見ながら言うが、視線なんて簡単に逸らされ「勝手にしろ」と一言喋り、どこかへ行ってしまった。
私達のやり取りを緊張した様子で見ていたクルー達だが、シェリーとマルコは平気みたいで近付いてき、心配そうに話しかけてくれた。


「***…大丈夫……?」
「ん?大丈夫!大丈夫!!」
「まあ、***がエースにハッキリ言ってくれたのは有難かったが…ほんとに大丈夫か?」


マルコまで心配そうにしてくるのが、なんだが笑えて来て「大丈夫だってば!」とマルコの背中を叩いてやった。



「シェリー、用意して行こっか…」



いつもなら「シェリーばっかに構うな」とか言って私の周りで騒ぎ出す人が居ないだけで、なんだか凄く寂しく感じた。









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(少しは私の事信じてよ…馬鹿エース……)



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