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▽ 知らない過去が憎い






静かな空気の中本をめくる音だけが部屋に響いている。
いつもならこの空気でも一緒に居たら幸せだと感じれるのに今日は違う。凄く居づらい。けど部屋を出る訳にもいかない。出て行くと後が気まずくなるだけだ。


痺れを切らしたようで本を閉じこちらに体を向けるマルコ。マルコと目が合う寸前で目をそらす私。


「いつまでそうしてんだよい」
「………………」
「たく、昔の事だ。何ヤキモチやんでんだよい。***も経験してんだろい?」
「私はマルコが初めてだった!」
「…………そうだったよい…」


しまった!という顔をするマルコを横目に自分の小ささに嫌気がさす。事の発端はエースとの会話からだった。何気無しにエースが「マルコって昔どんなんだったんだろな」の一言から始まった。昔からあんな口癖だったのか?あんな髪型だったのか何て話して楽しかった。
けどふと考えてしまった。昔、やっぱり彼女とか居たのかと。


いつも通りマルコの部屋へ行きベットでくつろいでる時に少しドキドキしながら「マルコって昔彼女いた?」と聞いてみた。すると本を読みながらマルコがこう答えた。


「あー……彼女は居なかったが一夜限りの奴は多かったよい」


そのマルコの一言から冒頭へと戻る訳で。
分かってる。マルコと私は歳も離れている。マルコの方が人生経験も豊富だ。分かってるつもりなのに可愛くない態度をとってしまう。


だって素直に嫌だから。
クサイ台詞かも知れないが、あんな怖い顔をしながら優しいキスをするマルコを、色っぽい身体も表情も私以外の人が知ってると思うと悔しくて仕方がない。


過去は過去、と割り切れない自分が嫌になりため息が出る。こんな事を気にしているから、マルコに「まだまだ子供だ」なんて言われるんだろうな…
けど他の人からしたら過去の事なんて言われるだろうけど過去の事まで嫉妬する程マルコの事が好きなんだから仕方がないよね?


自分に嫌気をさしつつもそう自分自身を励ましているとクッと笑いを堪える声が。そんな物この部屋に居るもう1人の人間に決まっている。


「……何笑ってんのさ」
「いや……何、百面相してんだと思ってな」
「してない!!」
「してたよい」


笑いを堪えながら言うマルコを見てなんだから負けた気分になっていると、いきなり視界が暗くなった。あ、マルコに抱き締められてる。そう分かった時にはマルコに押し倒されていた。


「たく、何変な事考えてんだよい」
「別に……なにも」


私の言葉にはあ、とため息をついているのに気付きしまったと後悔した。めんどくさい女だと思われた!?そう考えるとマイナス思考が止まらなくなる。
そんな私に気付いたのかは分からないが、マルコがいきなり頭をクシャクシャと撫で始めた。


「俺は確かに一夜限りの奴は多かった。が、それはただ欲を出すだけの奴等。一緒に居てぇと思ったのは***が初めてだよい」
「………へ?」
「たく、間抜けな面だな。惚れてなきゃお子ちゃまを側に置いたりしねぇよい」
「お、お子ちゃまじゃないから!!それに……マルコの事好きだから過去の事でも嫉妬するの!悪い!?」
「いや、愛されてて嬉しいよい」


ニヤリと笑いながら言うマルコになんだか負けた気分だなと思っているとチュッと軽いリップ音が。


「生憎俺は***じゃなきゃ勃たねぇようになっちまったんだよ」
「………それ複雑な気分なんだけど」


ブスッとしながら言う私を見ながら笑うマルコを見て嫉妬していた事を忘れてつられて笑ってしまった。







- 知らない過去が憎い -




あー、歳とったな。2回が限界だよい
………………
なんだ***物足りなかったか?
このおじさんやだ……張り切り過ぎ…疲れた……
若い奴がいいって言われねぇように必死なんだよい
…………マルコしか嫌だし
………………(やっぱりこいつじゃねぇと俺がダメだな…)









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