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▽ さくら








仕事の帰り道に桜の蕾がいくつも出来ているのを見つけた。あぁ、もうそんな時期かと思う。



「今年もローと桜は見れないかなあ…」


ローと付き合い始めて2年半が経つ。その内の2年は遠距離だ。前から興味を持っていた医療治療に力を入れている病院から声をかけられたロー。



引っ越しで忙しくて初めて一緒に過ごした春は桜も見れず、それからは会えるのは良くて月1。お互い忙しいが、ローは楽しんでいるみたいだ。



連絡も頻繁に取る訳でもない。休日に電話を1時間くらいしたら良い方だ。職場の人には「向こうに新しく女作ってる」とか「すぐ別れる」とか言われたけど、私はローを信じているし、ローも私を信じてくれているから喧嘩もなく続いている。




「え、結婚するの?」



桜がチラホラ咲き始めた時、同僚が寿退社をすると言ってきた。幸せそうに言う彼女がいつもより可愛く見えた。私の周りは結婚ラッシュみたいで、次々と結婚をしていく。



「早く***も結婚しなさいよっ!」
「出来るなら私もしたいよぉ!」


冗談混じりに返すが本音はすぐにでもしたい。結婚はそれぞれのタイミングというのがある。早いのが良いって訳でもないのは分かっているが、私だけが取り残されて行く気がして少し焦っている。



まあ、ローは仕事の事でいっぱいだろうなあ。
この前も電話した時ほとんどが仕事の話だった。ローが楽しいのなら良いんだけどね。あんまり結婚結婚と言って嫌われたくないし…



そう思いつつもトボトボと帰っていると誰かにぶつかった。



「あっ、すいません」



顔を上げた瞬間驚いた。居るはずのないローがそこに立っていた。あれ?今月は忙しいから会えないって言ってたよね?なのに、何で居るの??



「かっこいいからって見とれてんなよ、***」
「みっ見とれてないわよっ!てか…何で居るの…?」


思わずローの言葉に反応するが、何故ローが居るか分からない私。そんな私に気付いたのかローが少し機嫌が悪そうな顔した。



「好きな女に会いに来ちゃダメなのか?」
「……いや、ダメじゃないですけど…」



そう答えるとローがゴソゴソと何かを取り出した。目の前に出されたのは小さな箱。箱とローを交互に見ていると、ローがため息を吐きながら私の手を取る。てかため息とか少し失礼じゃない!?
そんな事を思っていると左の薬指に違和感を感じる。見てみると、見たことのない指輪がはめられていた。



「長い事待たせて悪かったな。結婚するぞ」
「………………結婚するぞって私に拒否権ないんだ?」
「当たり前だ。***が嫌がってもする」



私が断る訳ないじゃん。ロー以外の人との人生なんて考えた事ないのに。
ローらしいシンプルながらも可愛いデザインの指輪を見ながらそう思っているとポロポロと涙が出てきた。



「そんなに俺と結婚するのが嫌なのか?」



私の気持ち分かってる癖に。私が何で泣いているかも。わざと聞くのは私の口から、私の気持ちを聞きたいから。



「ローの奥さん出来るの私ぐらいだから、結婚してあげる」



涙を拭きそう答えるとローに抱き締められる。



「お前以外考えられねぇ」



2人で笑い合ってしっかり手を繋いで私の家へと帰った。帰る時に1本の桜の木が満開になっていた。



「やっとローと桜見れたなあ…」


ボソッと言うと聞こえてたみたいで「これから先、何十年と一緒に見れるだろ」と言われて柄にもなく照れてしまった。





- さくら -



これから2年後、
もう1人家族が増えているのは内緒。






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